リラックスできるBEV レクサスUX 300e(最終回) 長期テスト 航続距離と急速充電は要改善

公開 : 2022.08.06 09:45

レクサス初の純EV、UX 300e。プレミアム・ブランド初の電動モデルの実力を、数か月かけて検証します。

積算1万5388km レクサスの強みは変わらない

レクサスUX 300eが長期テストにやってきて以来、筆者は毎回の運転が楽しみだった。次に何どんな体験が待っているのか、期待させてくれた。

レクサス初となるバッテリーEV(BEV)のUX 300eは、他社のモデルにはない多くのことを達成している。この特長が新しいRZ 450eにも受け継がれれば、素晴らしいクロスオーバーに仕上がる可能性は高い。

レクサスUX 300e プレミアム・プラス(英国仕様)
レクサスUX 300e プレミアム・プラス(英国仕様)

ハイブリッドのUXを、BEVに仕立て直したモデルではある。だが、軽くない駆動用バッテリーを搭載しつつ、レクサスの強みといえる運転のしやすさや優れた質感を保っている。快適でラグジュアリーで、動的能力は洗練されている。

UX 300eは、内燃エンジン版より車重が275kg重い。だが運転していて、重いと実感する場面はない。数ヶ月一緒に暮らしてみて、このセグメントのライバルと比較しても、その居心地の良さには感心させられた。

乗り心地はしなやかで、車内は静かで落ち着いている。ドライバーが求めれば、想像以上に速い。レクサスらしい個性といえる。駆動用モーターの特性上、ハイブリッドのUXより0-100km/h加速は1.0秒も鋭い。

ただし諸手を上げて、というわけではない。英国の場合は市街地に住んでいるか、充電器を日常的に使える環境にいない限り、公称値で315kmという航続距離は充分ではない。郊外の充電インフラが整うまでは。

物足りない航続距離と急速充電能力

筆者は、目的地での充電という意識によって、UX 300eでの長距離移動は自然と避けるようになっていた。また長距離通勤しており、航続距離が一層短くなる冬場は、駆動用バッテリーを温存するため暖房をオフにすることも多かった。

ヒーター内臓のシートが、身体を温めてくれる唯一の手段といえた。とはいえ、これは稀なケースだろう。UX 300eを選ぶ人の場合は、基本的に近距離の移動が中心となるはず。普段の買い物程度なら、暖房を我慢する必要はない。

レクサスUX 300e プレミアム・プラス(英国仕様)
レクサスUX 300e プレミアム・プラス(英国仕様)

もう1つUX 300eの足を引っ張っていたのが、最大で50kWという急速充電能力。チャデモ規格の充電器では、54.3kWhの駆動用バッテリーを10%から80%まで回復させるのに、最短で52分も掛かる。

ヒョンデアイオニック5なら、さらに大きな58kWhの駆動用バッテリーを、20%から80%まで20分以下で充電できる。こちらの航続距離は383kmで、レクサスより安価でもある。

筆者が1番残念に感じたのが、インフォテインメント・システム。この価格帯の最新モデルとしては、充分な内容とはいえないだろう。英国では最上級グレードのタクミに実装されるものとの差は、歴然としていた。

グラフィックは、数世代前と感じるほど。操作性も褒めにくい。アップル・カープレイへの対応で、それらの不満に対応しているが、タッチスクリーンではないため完全に補えていたわけではなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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