パガーニ「EVは作らない」 電池が重くて無感動 少量生産スーパーカーの環境負荷は極小
公開 : 2022.07.15 06:05
スーパーカーメーカーのパガーニは、発電方法への疑問や環境負荷、走る楽しさの観点から「EVは作らない」と判断。ドライバーに感動を与えるクルマを作りたいとしています。
EVは重すぎて感動に欠ける
パガーニは、EV(電気自動車)を製造する計画はないとしている。パガーニというブランドにふさわしいかどうか、社内で4年間調査した結果だという。
パガーニのオラチオ・パガーニCEOは、EVは重すぎてエモーションに欠け、使用するエネルギーのほとんどは持続可能な方法で生産されていないとの考えを示した。また、スーパーカーが気候に与える影響は非常に小さく、内燃機関をどれだけ使用しても、ほとんど関係ないとのことだ。
オラチオ・パガーニCEOは、先日のミラノ・モンツァ・モーターショーでAUTOCARに対し、「2018年、社内にEV調査チームを作りました」と語った。
この調査チームの主な目的は、EVを製造するための世界的なホモロゲーション(特に米国向け)と安全性について検討・実現することだった。しかし、「この4年間で、スーパーカー市場でEVへの関心を見出すことはできなかった」という。
「現在、エネルギーの90%は自然エネルギーによらずに生産されています。エネルギーの90%が悪い方法で生産されているのに、ICEを搭載したわずかな数のスーパーカーが気候に悪影響を及ぼすと考えるのは馬鹿げています」
同社の研究によると、EVではウアイラRの総重量(1070kg)の半分以上にあたる重さ600kgのバッテリーを使用する必要があることも判明したという。同時に、EVの性能は過剰であるとの考えも示している。
「わたしはEVを理解するためにテスラを所有していますが、EVにこれほどの高性能は必要ないのです」とパガーニ氏。
「課題は、普通のICEのような良い感動を与えるEVを作ることです。パガーニは、ただ性能が良ければいいというものではなく、ドライバーに感動を与えたい」
「そのために軽量なクルマを作るという発想ですが、これが最大の難関です。夢は車重1300kgのEVですが、それは無理な話です」
運転しやすいクルマ作りを目指す
パートナー企業であるメルセデス・ベンツとの関係は良好で、必要であればV12エンジンをはじめとする主要システムの利用も可能だという。
「メルセデスは大きな会社ですが、決定権を持つ数人と座って話をし、耳を傾けてもらうことができます」
パガーニ氏は、クルマのデザインはドライビングと同様に非常に重要であるとしている。
「ダイナミクスだけを追求すると、どのクルマも同じようなものになってしまう。ファッションやスタイルに時間をかけることで、素晴らしいものが生まれるのです」
「目標は、運転しやすいクルマにすることです。紳士的なドライバーは、ウアイラRをとても簡単に運転することができます」
この他にも、優れたカスタマーサービスの提供、購入したクルマをサーキットに持ち込めること、公道走行が可能であることなどを理念として掲げている。すべての自動車メーカーの中で、これらを最も得意とするのがフェラーリであるという。
また、9000rpmまで回転するV12エンジンでありながら1万kmのメンテナンス・インターバルを持つように、扱いやすさも重要なポイントとされている。
「わたし達は極端なクルマを求めているわけではありません。紳士的なドライバー向けに、煩わしさのない簡単なクルマにしたいのです」
パガーニは過去20年間にゾンダとウアイラを450台あまり製造したが、今もその価値が高く評価されている。「ゾンダの中には、初期価格の10倍になっているものもありますよ」
また、9月に発表する新型C10の最初の100台については、すでに買い手が見つかっているという。しかし、こうした需要に満足することはなく、顧客の多くが金融サービス業に従事しているため、市場の状況には常に注意を払っているとのこと。
「突然いろいろなことが起こる可能性があります。現時点での成功と、将来を見通すことは違うのです」
そのために、パガーニは研究開発に膨大な投資をしており、通常売上の20%程度を充てている。
「当社は、未来に投資するトップ企業の1つです。通常、20%を投資しています。昨年は14%でした。レースと同じで、立ち止まることはできても、再スタートしたときには最後尾になってしまう。新型車がなくても、投資を続けているんです」
パガーニは現在、1週間に1台程度を製造している。10年前は1か月に1台程度だった。納車待ちは3年程度で推移している。