レトロなドリフトマシン ヒョンデ、燃料電池コンセプト公開 1970年代の幻のクーペ再現

公開 : 2022.07.15 18:05

ヒョンデは、1970年代にジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたクーペ(未発売)へのオマージュとして、レトロな外観を纏った水素コンセプトカー「Nビジョン74」を公開しました。

最高出力680psの後輪駆動クーペ

ヒョンデは、水素を動力源とするコンセプトカー「Nビジョン74」を公開した。水素燃料電池を採用し、あまり知られていない同社の歴史に光を当てたデザインとなっている。

デザイン部門の責任者であるSangYup Lee氏は、このコンセプトが生まれたきっかけは、偶然にも複数のプロジェクトが重なったことだったと説明する。エンジニアリングチームが高性能の水素パワートレインを試作する際、人目を引くようなボディを着せたいと考えたそうだ。それが、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロがデザインした1974年のヒョンデ・ポニー・クーペへのオマージュとして眠っていた計画を実現する機会になったという。

ヒョンデNビジョン74コンセプト
ヒョンデNビジョン74コンセプト    ヒョンデ

Nビジョン74は、2基の電気モーターをリアに搭載し、合計で680psを超えるパワーを発生する。62.4kWhのバッテリーを搭載しており、95kWの水素燃料電池で走行中に充電することができる。一般的なBEVと同様に急速充電が可能なほか、4.2kgの水素タンクは5分で充填できる。航続可能距離は590km以上とされている。

2基のモーターにより、アクティブ・トルクベクタリングも可能だ。また、バッテリー、燃料電池、モーターの冷却水経路をそれぞれ独立させ、これを集中制御するという新たな冷却方式を模索しているのもこのコンセプトの特徴だ。

ジウジアーロ・デザインへのオマージュ

こうした技術が未来を見据える一方で、デザインは過去へのオマージュとなっている。1970年代に登場したポニーは、ジウジアーロがデザインしたヒョンデ初のオリジナル国産車である。

新型車であるポニーの注目度を高めるため、セダンのほかにスポーティなクーペ仕様のデザインが依頼され、1974年のトリノ・モーターショーに登場した。しかし、当時はクーペを量産化することができず、プロジェクトは放棄され、唯一の実車プロトタイプも破棄された。

ヒョンデNビジョン74コンセプト
ヒョンデNビジョン74コンセプト    ヒョンデ

最近になって、1977年に描かれたポニー・クーペの設計図が発見され、量産化プロジェクトが従来考えられていたよりも長期にわたって存続していたことが明らかになった。そのデザインを、Nビジョン74で復活させることにしたのである。

Nビジョン74は、ヒョンデのEVシリーズ「アイオニック」の系列ではないが、デザイン的には関連性が強い。日本でも発売されているヒョンデ・アイオニック5は、5ドア・セダンのポニーからインスピレーションを得ている。ヘッドライトやテールライトの形状はNビジョン74と共通だ。

ヒョンデは、ラインナップ上の各モデルを、マトリョーシカではなくチェスの駒のように扱うというビジョンを掲げている。つまり、すべてのモデルが必ずしも同じように見える必要はなく、それぞれ固有かつ明確な役割を果たすという思想である。

SangYup Lee氏によると、Nビジョン74は「キング」であり、象徴的なモデルであり、セダンやSUVにこだわる必要はないという同社の意思表明であるという。

量産化が予定されているわけではないが、スペシャルモデルとして小規模な生産が検討される可能性がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事