新型車の発表から5年 TVR復活はどうなった? グリフィスの開発状況、電動化の道筋とは
公開 : 2022.07.19 06:05
不透明な資金繰り
グリフィスの生産開始に向けた具体的なアクションの1つとして、今年初め、南米のパートナー企業であるEnsorciaからの「数百万ポンドの投資」という発表が挙げられる。Ensorciaは、「南米でネット・ゼロ・カーボン技術の開発と環境保全型のバッテリー金属生産・加工に専念する企業グループ」と自称している企業だ。
TVRもEnsorciaも、この投資額については明らかにしていないが、生産ラインの準備、電動モデルの開発、ウェールズ政府からの200万ポンドの融資返済に充てられるとしている。
Ensorciaの出資は、グリフィスの生産に着手し、負債を返済するのに十分な額と言われている。しかし、2020年夏頃にダブリン証券取引所に上場して調達しようとしていた必要資金2500万ポンド(約40億円)を集めることができたかどうかは不明だ。ただ、TVRによれば、「初期の資金調達には成功した」という。
最新の記録によると、2021年6月期の決算で、現金8000ポンド(2020年の3万2000ポンドから減少)、1年以内に支払うべき負債および借入金1210万ポンド(2020年の1080万ポンドから増加)となっている。
また、グリフィスの受注時に予約金を受け取っているはずだが、これまで何件の受注があったのか、そして5年にわたる開発期間の中でどれだけキャンセルがあったかについては言及されていない。
TVRは「既存の受注を実現するためには、さらなる投資が必要」であり、「見込みのある複数の投資家と話し合いを続けている」と述べている。
TVRは何を目指しているのか?
TVRは今後、3台のEVの発売を予定している。そのうち1台はグリフィスをベースとするが、パワートレイン、デザイン、発売時期などの詳細は明かしていない。
パートナーであるEnsorciaは、水の浪費を最小限に抑える特許取得済みの塩水抽出プロセスによる「グリーン・リチウムの採掘および処理」を行う企業と説明されており、同社との提携はTVRの電動化に重要な影響を与えると言われている。
2021年6月、Ensorciaはチリのアタカマ地方にある5000エーカーの敷地と、ボリビア国境近くの2万2000エーカーの敷地で、その技術を使ってリチウムを採掘する権利を確保したと発表した。しかし、まだ採掘が始まった形跡はなく、同社と提携している自動車関連企業は今のところTVRのみである。
英国のスポーツカーブランドとして知られるTVRは、持続可能性を重視した製品ラインナップにより販売台数の増加を目指している。
しかし、その先鋒であるグリフィスは「2シーターのスポーツカー」という、比較的狭い市場をターゲットとしたモデルだ。大手の自動車メーカーでさえ、ますます採算が合わなくなっているカテゴリーである。200人という従業員数を考えても、すぐに事業規模が拡大することはないだろう。
現在、TVRは、5年がかりで作り上げたグリフィスに続く新型車の発表を控えている。つまり、計画通りにいけば、グリフィス(V8モデルと電動モデル)はブランドのシンボル的な存在となり、比較的安価なスポーツモデルや市場規模の大きいSUVなどが販売面を支えることになるだろう。
これと同じような構造を持つブランドに、フランスのアルピーヌがある。ただし、アルピーヌは親会社のルノーを後ろ盾としているところが大きな違いである。