確信犯か、勘違いか 電動キックボード「免許不要」はまだ先 新ルールが危険走行を助長?
公開 : 2022.07.21 05:45
確信犯? 「免許不要」うたう業者も
電動キックボードは現在のところすべて「原付」の扱いで20km/h以下の電動キックボードを運転するのに免許が不要、ヘルメット任意で乗れるようになるにはまだあと2年近く必要だ。
しかし、販売業者の中には、法律を都合よく解釈(もちろん違法)して「免許不要!規制緩和適合の電動キックボード」を販売している業者も存在する。
ちなみに警視庁の公式サイトでも「販売する方へ」として以下のように警告している。
「電動キックボードの販売取扱店においては、販売する際に上記の点について丁寧にユーザーに対して説明してください。『運転免許がなくても公道で乗れる』などの虚偽の宣伝や説明をすると、刑事責任を問われる場合があります」
「運転免許がなくても公道で乗れる」、「歩道を走ることができる」などは、いくつかの業者がすでに自社サイトなどでアピールしている。
知らずに買った人たちは「有名な店が販売しているのだから道交法が改正されてヘルメットなし、免許なしで乗れると思った」と嘆く。
歩道で乗っていたら警察に注意を受けた人もいる。
なお、電動キックボードは定格出力によって原付1種、原付2種に分かれる。
(1)定格出力600Wまで⇒原付1種(排気量50ccの原付バイクと同じ扱い。原付以上の免許が必要、普通免許含む)法定速度30km/h)
(2)定格出力601-1000Wまで⇒原付2種(排気量125ccの原付バイクと同じ扱い。小型限定普通二輪免許が必要。法定速度60km/h)
1000Wを超えるハイパワーな電動キックボードも存在するが「軽二輪」扱いとなり、運転するには普通二輪免許以上が必要となる。
強引すぎ? 免許不要になったワケ
今年4月に可決・成立した電動キックボードに関する改正道交法だが、いちばんの問題は20km/h以下なら「免許不要」を許可している点である。
道交法を知らない人たちが2年後に車道にあふれて好き勝手走りまくるのかと思うと、本当にゾッとする。
事故は多発し死傷者も大勢出ることだろう。
そもそも、「免許不要」についてどのように決まったのか。
改正道交法の元になった「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会報告書」に驚きの事実が公開されている。
2021年1~2月に埼玉県運転試験場にて埼玉県警察運転免許センターでおこなわれた電動キックボードの「走行実験」の結果を紹介しよう。
実験ではこれまで電動キックボードを運転したことがない者100人(10~60代、免許あり50人/なし50人)を被験者として「免許の有無で交通違反の件数にどれくらい差が出るのか」を調べた。
主な違反を紹介しておこう。
指定場所不停止 347点/1337点(免許アリ/ナシ、以下同)
信号無視 176点/541点
右側通行(逆走) 64点/235点
右左折方法違反 58.1点/91.3点
歩行者保護不停止等 44点/84点
免許の有無によって明らかに違反回数に大きな違いが出たわけだが、意外なことに結論は以下のように記されている。
「運転免許を受けている者と受けていない者との間で、一部の項目を除き、運転者の運転行動に全体的には大きな差はないと言うことができる。個々の違反行為では大きな差が生じているものもあるが、これらはもっぱら交通ルールに関する知識の差が要因となっているものと考えられる」
これだけ大きな差がありながら「運転行動に大きな差はない」としており、その差が出た理由を「交通ルールに関する知識の差が要因」としている。
免許の有無で交通ルールに関する知識の差が生じるのは当たり前のことである、だからこそ「20km/h以下で免許不要とするのは危険」という結論を出すべきではなかったのだろうか?
電動キックボードに関する改正道交法は本当にこのまま施行されてしまうのか。
主導する経産省は「人命より経済」で規制緩和を強力に推進しているが、警察庁は「規制緩和を目的としたものではない」とのスタンスだ。
警察には電動キックボードの取り締まりを強化して積極的に取り締まって欲しいと祈るばかりだ。