カリフォルニアン・ポルシェ 356と911(930型/964型) スピードスター3台を乗り比べ 前編
公開 : 2022.08.06 07:05 更新 : 2022.08.08 07:05
週末はサンデーレース、平日は通勤に使える
かくして、日曜日はサンデーレース、月曜日には通勤に使えるモデルとして、ポルシェはヒット。スティーブ・マックイーン氏やジェーム・ズディーン氏といった、ハリウッドスターまでもが愛車に選び、ステータスを掴んでいった。
1954年に導入された356 スピードスターの北米価格は2995ドル。ボディは356 カブリオレと同じスチール製で、防音材やカーペット、サイドウインドウを開閉するレギュレーターすら省かれていた。
フロントガラスは角度が寝かされ、湾曲した小ぶりなものへ置換。取り外すことも可能で、356の緩やかにカーブを描くサイドラインを美しく引き立てた。雨天時には、ベーシックなフードをかぶせることも可能だった。
装備が削られたことで、車重は356 カブリオレから68kgも減量。大きく開口部の開いたシルエットと、雨が降るとずぶ濡れになることから、バスタブという愛称も与えられた。
最初期のスピードスターは、A型と呼ばれる以前の356から派生しており、エンジンは54psか70ps版の1.5Lだった。本日ご登場願ったのは1956年以降に作られたA型で、オリジナルでは通常の356と同じ59psの1.6Lが搭載されていた。
英国でポルシェ専門ショップを営む、マーク・サンプター氏がオーナーで、2015年にカリフォルニア州から輸入。北米でのレストア時に、エンジンは1.9Lへボアアップされている。ちなみに以降のB型とC型には、スピードスターが設定されていない。
911というブランドに対する力強い表明
サンプターの356には、電子インジェクションと高性能なカムシャフトが組まれ、ツインプラグ化されており、最高出力は142psを発揮する。100psだった、レアな1500 GS カレラGT スピードスターよりパワフルなことになる。
艷やかなブラックのボディで颯爽と発車したいところだが、その前に残る2台のスピードスターに触れておこう。30年のブランクで登場したシルバーの930型カレラ3.2と、ホワイトの964型911だ。
ポルシェの原点となった356は、1965年に生産が終了。911へバトンタッチした。だがリアエンジンというレイアウトには批判がつきもので、924や928といったフロントエンジン・モデルでの方向転換をポルシェは模索していた。
しかし、テクニカルディレクターのヘルムート・ボット氏とCEOに就任したピーター・シュッツ氏は、オリジナルのスピードスターから着想を得た911を考案。再び注目を集めることに成功した。
1987年のドイツ・フランクフルト・モーターショーでお披露目されたのが、911 スピードスター・クラブスポーツというコンセプトモデル。ナローボディのカレラ・カブリオレをベースに、70kg軽く2シーター化されていた。
「スポーティでトップレス、ピュアなドライビングプレジャーを表現」したと、ポルシェは主張した。取り外しできるフロントガラスが与えられ、簡素なフードが、コブの付いたリアカバー内に収納されていた。
911というブランドに対する、力強い表明でもあった。そして1988年、カタログモデルとしてスピードスターが復活することになる。
この続きは後編にて。