カリフォルニアン・ポルシェ 356と911(930型/964型) スピードスター3台を乗り比べ 後編
公開 : 2022.08.06 07:06 更新 : 2022.08.06 10:38
シュツットガルトの名門が生み出した、太陽に1番近いスピードスター。356と911、964の3モデルを英国編集部が振り返ります。
もくじ
ーベースはカレラ3.2 カブリオレより10kg軽量
ー古い911らしく人間工学は完璧ではない
ーあらゆる点で930型より優れる964型
ーレス・イズ・モアを体現した356 スピードスター
ー356と930、964 スピードスター3台のスペック
ベースはカレラ3.2 カブリオレより10kg軽量
930型ポルシェ911 スピードスターでベースとなったのは、カレラ3.2。英国の場合、通常のナローとターボ用のワイド、2種類からボディは選択できた。
空冷の水平対向6気筒エンジンは、オーバーヘッドカムで230psを発揮。ワイドボディでは、サスペンションもターボ同様に引き締められていた。車重は1210kgで、911 カブリオレより10kg軽量だった。
初代の356 スピードスターに準じて、2代目のスピードスターでもメカニズム上の変更は小さい。排気量は3164ccのままで、まだ目新しかった5速MTが組み合され、最高速度244km/h、0-100km/h加速6.0秒がうたわれた。
サイドウインドウは手巻き式で、フロントガラスもコンパクト。簡素とはいえフードが備わっていたにも関わらず、オーダー時には車内が防水ではないことへの免責書類へ、サインが求められたという。
一方でこのスピードスターは、気軽なサンデーレースは意図されていなかった。当時の911 カレラ・カブリオレの英国価格が4万1710ポンドだったのに対し、5万2850ポンドもしたのだ。
カーコレクターの投資目的としても、想定はしていなかっただろう。現在、4万8200kmの走行距離を持つシルバーのスピードスターには、18万4995ポンド(約3090万円)という価格が付いている。
2代目のスピードスターは2103台が生産されているが、1942台がワイドボディ。珍しいナローボディだったら、一層のプレミアムが加算されるはず。
古い911らしく人間工学は完璧ではない
今回の3台目が、964型の末期に追加された911 スピードスター。1992年から1993年に生産され、ターボ風のワイドボディが15台、ナローボディは930台が売れている。
このクルマは、オーナーのビル・ロビンソン氏が20年前にテキサス州で購入したという。厚みのあるバンパーとハイマウント・ストップランプ、ステアリングホイールのエアバッグなどが、欧州仕様とは異なる。
パワーウインドウとエアコンが備わり、4速ATのティプトロニックという点がアメリカらしい。一方、脱着できるフードがリアデッキ内に格納され、ボディカラーと同色に塗られたシェルのRSバケットシートは標準装備。これは、スピードスターらしい。
エンジンは空冷で3.6Lの水平対向6気筒。最高出力は250psへ若干高められているが、車重は130kgも重い。
まずは、930型の911カレラ 3.2スピードスターから運転してみよう。筆者の身長は170cmを少し超えるくらいだが、低いフロントガラスの上から頭が出てしまう。
古い911らしく、人間工学は完璧ではない。フロアのペダルはストロークが長く、左にオフセットしている。ダッシュボードのレイアウトにも、慣れるまでに時間がいる。
スピードメーターには、肉厚なステアリングホイールが掛かる。針が160km/h付近を指している時は、頭を傾けないと確認できない。 とはいえ、それは些細なこと。レッドで仕立てられたインテリアは見た目に素晴らしく、居心地もいい。
英国郊外の一般道を流し始めると、911 ターボ同様に引き締められたサスペンションで乗り心地は硬い。スチール製のルーフがないため、ボディには細かな振動も生じる。