「アルトゥーラ」がマクラーレンの第2章と呼ばれるワケ 走りもコクピットも新世代に

公開 : 2022.07.26 11:45  更新 : 2022.11.04 13:50

乗り心地とハンドリングについて

ここまで説明すれば、アルトゥーラマクラーレン・オートモーティブにとってどれほど重要なモデルかがご理解いただけるだろう。

彼らがアルトゥーラのことを「マクラーレン・オートモーティブの歴史が第2章に入ったことを告げるモデル」と説明しているのも、もっともな話といえる。

マクラーレン・アルトゥーラ(欧州仕様)。
マクラーレン・アルトゥーラ(欧州仕様)。    マクラーレン・オートモーティブ

しかし、アルトゥーラに試乗した印象は、あらゆる意味で「マクラーレンらしさを、さらに進化させたもの」だった。

たとえば、タウンスピードでの優しい乗り心地は、これまでのマクラーレンに通じるものだが、サスペンションの動き方はより精度感が高まり、シャキッとした印象を与えるようになった。

この結果、ステアリング操作に対する“分解能”が一層向上し、より精緻なライン・コントロールが可能になったように感じた。

同じ快適性という面でいえば、キャビンの静粛性が高まった点も忘れるわけにはいかない。

PHEVの静粛性と走り その評価は?

新設計のV6エンジンは、等間隔爆発のため滑らかで澄んだ音色を響かせるが、その音量は全般的に控えめ。風切り音やロードノイズもこれまでより低く抑えられているように感じる。

また、信号待ちなどで聞こえてきた「ジジジジジジ……」という電磁ポンプと思しきノイズも、アルトゥーラでは一切聞こえなくなった。レーシングカーを思わせるこの音がなくなったのはやや淋しくもあるけれど、質感の向上に役立ていることは間違いないだろう。

PHEVのアルトゥーラは容量7.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。エンジンを始動しないで31kmのEVドライブを堪能できる。
PHEVのアルトゥーラは容量7.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。エンジンを始動しないで31kmのEVドライブを堪能できる。    マクラーレン・オートモーティブ

ドライビング・フィールは、紛れもなくマクラーレンそのものだ。

まず、油圧式パワーアシストを得たステアリングがもたらすビビッドなフィーリングは、マクラーレンの伝統というべきもの。バツグンの剛性感とリニアリティでドライバーに深い安心感を与えてくれるのも、マクラーレンの歴代モデルに通じる美点である。

サスペンションはマクラーレン・オリジナルのアクティブ・タイプではなく、“GT”に近いプロアクティブ・ダンピングコントロールを装備する関係で、いかなるときでも完全にフラットな姿勢を保つとは言いがたいが、それゆえにドライバーが積極的な荷重移動を行える点は多くのスポーツドライバーから歓迎されることだろう。

精密・信頼感が際立つ、電動世代の680ps

95ps/225Nmの電気モーターを得て、680psと720Nmのシステム出力とトルクを生み出すパワートレインのレスポンスが驚くほどシャープな点も、マクラーレンの伝統をよく受け継いでいる。

絶対的なパワー感でいえば720Sに一歩譲るものの、純粋なスポーツドライビングを楽しむうえでは、サーキット走行を含め、必要にして十分なパフォーマンスといえる。

マクラーレン・アルトゥーラ(欧州仕様)。
マクラーレン・アルトゥーラ(欧州仕様)。    マクラーレン・オートモーティブ

最後にワインディングロードやサーキットでのコーナリングについて記せば、究極の精度感とスタビリティでドライバーに深い安心感をもたらしてくれる点は従来のマクラーレンとまったく同系列。

試乗コースに含まれていたアスカリ・サーキットでは、私なりにかなり頑張ったつもりだったが、それでもリアタイヤが流れ出す兆候さえ感じ取ることができなかった。この辺のスタビリティ感には、ダブルウィッシュボーン式からマルチリンク式に改められたリアサスペンションのパフォーマンスも貢献しているはずだ。

すべてが新しく、そしてすべてがマクラーレンらしい。

新世代のプラグインハイブリッド・スーパースポーツカーであるアルトゥーラは、そう表現するのがもっとも正しいように私には思えた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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