M誕生50周年 BMW M5 CSでニュルブルクリンクへ 創設者と開発本部を尋ねて 中編

公開 : 2022.08.13 09:46

往年の3.0 CSLと重なるM4 GTSの姿

彼は、ブランドのピラミッドについても説明する。頂点にレーシングカーが位置し、その下に公道用のMモデル、そしてMパフォーマンスと呼ばれるライトなM。底辺には、一般的な量産モデルが属する、と。

1970年から1980年代は、ピラミッドの上層部は大きい存在だったが、縮小した現在でも考え方としては頂点に据えられている。2.3tの車重を持つX6 Mがレーシングカーの次の層にあると考えるのは不自然だが、多様化した現在、論理的にはそういうことだ。

ニュルブルクリンクを攻めるBMW M4 GT3マシン
ニュルブルクリンクを攻めるBMW M4 GT3マシン

2021年、Mモデルは16万台以上が売れている。その大部分が、クロスオーバーだったという。

そんな事実もあって、ニュルブルクリンク24時間レースに向けて準備を整えた、M4 GTSは一層魅力的に映る。今年で50回目の戦いとなるが、これが本来のMらしい姿だ。

2022年は、前年までのM6 GT3から交代する、新しいレーシック・マシンのデビューシーズン。公道用のM4より全幅は150mmも広く、アグレッシブなエアロキットと低い車高で、野性的な勇ましさに溢れている。

往年の3.0 CSL、バットモービルのシルエットとも重なって見える。アウディR8ポルシェ911 GT3、メルセデスAMG GTなどと伍するBMWのMモデルは、やはり特別。タイムレスな興奮がある。

ニュルブルクリンクは、1973年にBMWモータースポーツ社として初勝利を掴んだ場所。夜を向かえると、各チームの熱気は一層高まった。走り疲れたマシンは、ピットインの度に準備が整えられ、送り出される。

サウンドでも特別さを実感できるM5 CS

カラフルなロゴが闇夜に浮かび上がり、ブレーキとガソリンの焼けた匂いが周囲を包む。多気筒の内燃ユニットが放つ轟音で満たされ、スプリッターがアスファルトに削られる。ニュルブルクリンク24時間は、格別だ。

BMWモータースポーツ社の創設に関わった、ニアパッシュにとっても特別。83歳を迎えた彼ですら、昨晩は午前3時までM4 GT3マシンの様子を見ていた。BMWジュニア・チームに属する若者への、アドバイザーを努めている。

ニュルブルクリンクを攻めるBMW M4 GT3マシン
ニュルブルクリンクを攻めるBMW M4 GT3マシン

レースでは、M4 GT3の99号車が上位タイムで予選を通過。ところが夜間にリタイア。最終的に完走できたのは、1台だったようだ。新マシンでの初シーズンには、トラブルがつきもの。少なくとも、速かったことは間違いない。

今回、ノルドシュライフェまでの相方に選んだのが、BMW M5 CSだ。アルカンターラで仕立てられたステアリングホイールと、低い位置にセットされたカーボンファイバー製シェルのバケットシートが、筆者を満たしてくれる。

放たれるサウンドによって、特別なクルマの中にいることを目を閉じても実感できる。クリアなターボチャージャーの悲鳴と、リアルなエンジンサウンド。コンポジット素材のボンネットは、多くの音をドライバーに届けてくれる。

世界中から熱心なクルマ好きが集結する、ドイツ北部。Mのトリコロール・ロゴは、多くの人の気持ちを高ぶらせているはず。最初は下り坂のブリュンヘン・コーナーで観戦し、夜には激しいバンクコーナーが待ち構えるカルーセルへ移動した。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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