ルノースポールの歴史 スピダーからトロフィーRまで 写真とともに振り返る

公開 : 2022.07.24 06:05

ニュル最速 公道レーサー「R26.R」投入

2008年、ルノーは2代目メガーヌを、今や象徴的な存在となったR26.Rとともに華々しく送り出した。カーボンファイバー製のボンネット、リアシートと防音材の撤去、ロールケージ、ハーネス付きのバケットシートなど、公道走行可能なモデルであることを疑わせる装備であった。

標準のRSよりも123kg軽く、ニュルブルクリンクのラップタイムでは8分17秒という、前輪駆動車の新記録を打ち立てた。わずか450台が欧州で販売されたが、日本円にして400万円近い価格のため、多くが売れ残ったという。現在の中古車価格を見ると、ルノースポールの中で最も高価なモデルの1つとなっている。

ロールゲージ、バケットシート、ハーネスにより、さながらレーシングカーのような雰囲気を醸し出すメガーヌR26.R。
ロールゲージ、バケットシート、ハーネスにより、さながらレーシングカーのような雰囲気を醸し出すメガーヌR26.R。

一方、エントリーモデルのトゥインゴにも、この時期にRSが設定された。トゥインゴ・ルノースポール133は、1.6Lの自然吸気4気筒を搭載し、急加速とまではいかないまでも、きびきびとした加速を実現。「そのシャシーのおかげで、速くて高価なスポーツカーよりも、タイトで曲がりくねった道を楽しむことができる」と、当時の英国編集部は綴っている。

しかし、クリオやメガーヌのようなインパクトを与えることはできず、今のところ3代目にはRS仕様は設定されていない。

ライバルとの熾烈な争い 王座奪還

2010年になると、3代目メガーヌにRSが登場する。ルノースポール・メガーヌ250は、2.0L 4気筒にツインスクロールターボチャージャーを組み合わせ、最高出力250psを発生。6速トランスミッションを搭載し、フロントスプリッターやセンターマウントマフラーでひときわ目立つ存在となった。3ドア・クーペのみが導入されたこのモデルは、先代よりも成熟していたものの、すべての批評家がそれを評価したわけではない。その後、出力が265psに向上し、外観もグレードアップした限定モデルRSトロフィーが登場。RS 265として量産が開始された。

この時点で、ライバルたちはルノーのニュルブルクリンク市販車最速記録の奪取を狙い始めており、ついにはセアトレオンクプラ280で7分58秒4を記録して王座に就いた。ルノースポールはメガーヌRS 275トロフィーとトロフィーRを投入し、反撃に出る。

トロフィーをさらに進化させ、記録更新を狙ったトロフィーRは、セアトからニュルのラップレコード奪還に成功した。
トロフィーをさらに進化させ、記録更新を狙ったトロフィーRは、セアトからニュルのラップレコード奪還に成功した。

前者はアクラポヴィッチのチタンマフラーを装着して275psにパワーアップし、強化スプリング、アンチロールバー、ダンパー、LSDを装備している。後者には、オーリンズ製アジャスタブルダンパー、ミシュラン製パイロット・スポーツカップ2、高性能ブレーキを装備したほか、防音材やエアコン、ステレオシステム、オートヘッドライト、リアシートまでも取り外されて101kgの大幅な軽量化を実現。その結果、ドライバーのロラン・ウルゴンは、7分54秒36のラップタイムで記録を更新した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    トム・モーガン・フリーランダー

    Tom Morgan-Freelander

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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