BMW 218dアクティブ・ツアラーSE

公開 : 2014.07.19 22:40  更新 : 2021.01.30 21:17

■どんなクルマ?

BMW 3シリーズがデビューしてから20年。ついに現代の主流である前輪駆動車が、2シリーズ・アクティブ・ツアラーなるモデル・ネームを冠して市場に投入されることになった。

プレミアム・プロダクトという立場を守り続けながら、ここヨーロッパ最大のCセグメント・ハッチバック市場でも一花咲かせようと言うわけだ。

BMWもメルセデスやアウディと同様に、ここのところモデル・レンジの拡大に熱心だ。ダウンサイジング化と都市部での満足度を確固たるものにするのと並行して、スポーティーな仕立てをもって中流層の人々を振り向かせようとしている。

“セミ・コマンド・ドライビング・ポジションもアクティブ・ツアラーにおける重要な要素なのです” とBMWのディレクターであるイアン・ロバートソンは言う。

アクティブ・ツアラーを設けたことはブランドそのものの価値を下げるのではなく、プレミアム・マーケットの最高峰とされるレベルを下げる事が目的なのだそうだ。そうすることによって購買層の手の届きやすいクルマになるというわけだ。アクティブ・ツアラーを購入者の内訳の70%を、新規顧客として呼びこむも期待していると氏は言う。

駐車するのに苦労を強いないほどの小ささかつ高価なマウンテンバイクを十分に積み込むことのできる、オーストラリアでテストしたアクティブ・ツアラー218dの価格は、フォードC-マックス チタニウムよりもわずか£3,000(44万円)高くなるだけに留まった。

数値データを見てみよう。全長は4323mmとなり4255mmフォルクスワーゲン・ゴルフMk-7より長くなる。幅はゴルフよりも1mm短い1800mm、全高は1452mmのゴルフよりも遥かに大きい1555mmとなる。メルセデス・ベンツ Bクラスと真向勝負するサイズとも言えるのである。

骨格は新しいミニにも用いられるBMW製のUKL1プラットフォームを全長全幅ともに延長したものを使用をする。高強度を要するポイントのみ骨格に厚みをもたせる差厚鋼板を採用することは、フロントとリアのサスペンションの洗練にも繋がるのだ。

そんなプラットフォームと高張力鋼板製サブフレームの恩恵を受けて、フロント・エンドは今までに例を見ないほど強度を増したという。フロント・ストラットはアルミニウム製のベアリングに支持され、スタビライザーは変厚円筒構造を採用した。リアにはBMWが頑なに守りぬくマルチリンク式サスペンションが組み合わされる。

シングル・ピニオン式となる新しいステアリング装置は、サーボ・ユニットとステアリングの歯車がひとつの要素として組み合わされるために、非常に抵抗が小さくなっている。しかしながらこれらの技術仕様を声高に謳わず、あくまで’トルクステアを軽減する’というに留めているのが何ともBMWらしい。

■どんな感じ?

隠さずに言うと、オーストラリアのインスブルックでテストした218dはあらゆる点で期待はずれだった。落胆したのは、公道を走りだしてすぐのことだった。低速でもフロント・タイヤが生ずる多大なロード・ノイズは容赦なく室内に流れ込んでくるのである。225/45R18インチのタイヤはこの手のクルマにとって少しばかりアグレッシブ過ぎるのかもしれない。

更に驚かせたのはディーゼル・エンジンの野暮ったさだ。この4気筒エンジンはミニに組み合わされるものと同じなのだが、少なくともミニのノーズに収まる限りは、滑らかで静かに仕事をする。しかしながら2シリーズに組み合わされた途端に、どう努力しても受け入れ難くなってしまうのだ。

ギアシフトも欠点の一つだ。どちらかと言うとクイックな仕立てではあるが、ゲートからゲートへとノブを移動させるたびに安っぽい感触を与える。特に、隣接する1速とリバースの間を行き来する際の動作はぎこちなく、リバースに入れるにはかなり力を入れなければならなかった。

高速域でも不満は残る。いざ高速道路を走りだせば、Aピラー付近で生じるウインドウ・ノイズには我慢ならない。

根本的には良く出来ているのだが、同クラス上位の前輪駆動のライバルに比べると後塵を拝す結果となった。

コーナーでのハンドリングはしっかりとしているし簡単に操作することができる。程よい重さと鋭敏さはBMWの伝統的な味付けだといえるだろう。悪くない。しかしながら感動は束の間、スポーツ・モードでは特に低速でステアリングは重すぎる傾向にある。

低扁平のタイヤではあるが、オーストラリアの路面での乗り心地はまずまずだ。基本的にはダイレクトで、ドライバーをその気にさせるセッティングなのだが、そこにBMWらしさを無理に捩じ込もうとしているため、結果的にはどっち付かずな印象は拭えない。

実用性の観点で見れば、468ℓのトランク容量には満足できる。また40:20:40に分割可能な後部座席のおかげで最長2.4mまでの長さの荷物を積み込める点も賞賛できるポイントだ。

後部座席の足元の広さは十分だけれど、窄んだルーフラインと小さな窓のせいで余計な’囲まれ感’がでているのも事実だ。体格の良い大人でもフロント・シートが小さいと思うことはないはずだ。ただし、フォルクスワーゲン・グループのMQBプラットフォームを用いるライバル車ほどの広さはない。

時間とお金を費やしたキャビンやダッシュボードに関しては好印象だ。ダッシュボードの全体的な構成は別として、ほかの主流メーカーのどのモデルよりも洗練されているといえるだろう。建て付けもまた美しい。

運転席の使い勝手も非常に良い。ドアの収納は大きく、センター・コンソールのドリンク・ホルダーにも驚かされる。アーム・レスト下やセンター・スタックにも仕切り付きの収納が隠されている。オプションで選ぶことのできるヘッド・アップ・ディスプレイ用のカバーの安っぽさだけは改善して欲しい。

外から見た印象はクリアで、大変巧くデザインされていると感じる。ただしコンセプト・モデルにはあったメリハリや、表面の陰影の作り方は失われている。

抵抗係数を0.26にまで抑え込んだ点は素晴らしい。またテスト車両のようなダーク・レッドよりも明るいメタリック・カラーを選ぶことをおすすめする。

多くの人がこのクルマに乗れば、スポーティーと感じられるだろう。この点はBMWのお家芸とも言えるだけに、前輪駆動による弊害を受けて高められたドライビング・ポジションは非常に惜しい。BMWの技術者は、もう少しミニから学ぶといいだろう。

シャシーの呼び起こすダイレクト感というよりも、正確性を最優先して作ったのだろうと感じる結果となった。

■「買い」か?

運転していて楽しいとは思えないのだが、ディーゼル・エンジンとマニュアル・ギアボックスの酷さを考えれば許せる範疇だと言える。

悪いことは言わないから、3気筒ターボとオートマティック・トランスミッションを組み合わせた218iを買うことをすすめる。こちらを選んだとしても燃費が悪くなるわけではないのだから、なおさらだ。

アクティブ・ツアラーは高級車の基準に従い、インテリアや市街地での実用性はトップ・クラスだといっても過言ではないだろう。エンジンとトランスミッションの種類も豊富(3、4気筒ターボ・ガソリン、6速と8速のAT、四輪駆動など)にある点も、クラス唯一の価値を生み出す要因となるだろう。ちなみに8速ATは今年末に導入される予定だ。

ちなみに140psを発揮する3気筒ターボ・ガソリン・エンジンを組み合わせた218i(オートマティック・テールゲート、左右独立オート・エアコン、後方パーキング・センサー、スライド・リア・シート、ブルートゥースとDABラジオを含む)は、ディーゼルのフォードより数十万円高いだけに留まり、燃費は20.2km/ℓをマークする。

その他の諸費用を考えても、2シリーズはフォードC-マックスよりも費用対効果は高いといえるだろう。このクラスの加速する競争の勢いを強めるのは間違いない。

218dとマニュアル・トランスミッションの組み合わせはベストだとは言い難いが、タイヤとホイールの相性やトランスミッションのセッティングを見直せば、BMW初のモデルとしては非常に素晴らしい。少なくともメインストリームのライバルたちは、油断ならない事態になることは間違いない。

(ヒルトン・ホロウェイ)

BMW 218dアクティブ・ツアラーSE

価格 £24,205(419万円)
最高速度 208km/h
0-100km/h加速 8.9秒
燃費 24.4km/ℓ
CO2排出量 109g/km
乾燥重量 1375kg
エンジン 直列4気筒1995ccターボ・ディーゼル
最高出力 150ps/4000rpm
最大トルク 33.6kg-m/1750-2750rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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