フィアット・パンダ・クロス0.9ツインエア・ターボ

公開 : 2014.07.21 23:50　　更新 : 2017.05.29 18:51

■どんなクルマ?

3代目となるフィアット・パンダ4×4の ’クロス’ 版は、オフロードにおける性能がさらに高まり、いかにもクロス・オーバーらしいスタイリッシュなルックスが与えられる。わずかに出力も高められ、必然的に価格も上昇する。

もともとのパンダ4×4の小さなボディのもつ高い収容能力や、フィールドを走る際の適正には十分に好感がもてるだけに、付加的な能力を得たクロスは、より一層魅力的になっているのである。

■どんな感じ?

大部分はパンダ4×4のそれと同じだけれど、市街地を走ればこの黄色いボディはひときわ周囲の耳目をあつめることになる。

なぜか。それは全くの新設計となるフロントとリアのバンパー、アンダー・ガード、また2つの独立した追加ライトが大きく影響しているようだ。

また、既に車高が上乗せされた4×4よりもさらに9mm高まったことが、オフロードでの能力を引き上げている。

フィアット製の4WDシステムはキャリーオーバーされ、エレキ-ハイドロ・センター・クラッチと、個々の車輪に別々のブレーキングを行い独立したしたトルク配分を行うスタビリティ・システム、いわゆる電気ディファレンシャル・ロックが備わる。

フロント・シートの間にあるテレイン・コントロール・セレクターによってこれらのシステムを統率することが可能だ。オート・モードを選べば、スリップするような路面でないかぎり、トルクの98%は前輪に供給され、また100％をリア・アクスルに割り当てることもできる。

またオフロード・モードでのデフは、トルク供給に要するタイム・ラグを削減することに徹する。このモードから、いよいよデフ・ロック・システムが活動を始めスタビリティ・システムももっとも適したセッティングを探り始める。’ヒル・ディセント’ とは、ここでは24km/h以下で急な傾斜を走行する際に、ドライバーはハンドル操作をするだけで良くなる、という機能のことを言う。

径を拡大したオール・シーズン・タイヤと、金属製のアンダー・ガードを持つことによりオフロードでの走破性能は高まった。もちろんこのクルマにのってパリ・ダカールラリーに出場しろというのは無茶な話なのだけれど、手近な林道や、草の生い茂るフィールドを走る分には大いに力を発揮することになるだろう。

エンジンは4×4と同様に、ツインエア・ガソリンか1.3ℓマルチジェット・ディーゼルから選ぶことができる。ディーゼルは5速のギアボックス、ガソリンはその5速の低速側にギアが追加された6速のギアボックスとの組み合わせとなる。

わずかな適性変更によって、出力が5ps高められ、ディーゼルは80ps、ガソリン・エンジンは90psを発揮する。しかしながら、これといってパワーが高まったと感じることはなく、あくまで標準の4×4と同じような印象にとどまっている。

ツインエア・エンジンは相も変わらず熱心なドライビングに適しているのだが、ミドル・レンジでは驚くほどにその色彩が褪せてしまうことまでも、かなしいかな変わりはない。

モーターウェイに連れ出せば、1段追加されたギアのおかげで格段にリラックスして運転できる。さらにいくぶん、鼻先も軽くなっているのでコーナーでの印象も良い。

往年のパンダほど、シンプルなエンターテイメント性は持ち合わせていない。ただし乗り心地や振る舞いは非常に洗練されている点は大きな進歩と言っても過言ではない。

内装の色や記事の選択肢も多く、オート・エアコンやマイクロソフトと共同開発した車載情報システムであるブルー&ミーブルートゥース、USB接続などの標準装備も豊富だ。

ツインエアの車両価格は£15,945(236万円)、ディーゼルは+15万円からということを再びここに記しておく。

■「買い」か?

フィアット・パンダ・クロスは、シティ・カーのもつ特性と、さほど荒れていないオフロードでの走破性能をユニークに融合しているクルマだ。

£17,000(252万円)、プライスタグを一目見るといくらルックスがいいからといっても購入を迷う向きは少なくないはずだ。ただしそのルックスこそ、投資する意義がある。そのうえオフロードでの実力も兼ね備えていると考えれば、購入に踏み切ってもよいのではないだろうか。

(アダム・タオラー)