FF化した新型トヨタ・クラウン 2つのハイブリッドシステム搭載 新ハイブリッドの開発思想とは?
公開 : 2022.07.26 05:45
実績あるTHSとは別枠で開発
1モーターハイブリッドシステムを開発したのは、トヨタグループのブルーイーネクサス。
同社は電動化のための駆動モジュールの開発や販売を目的とし、アイシンとデンソーが協業する形で2019年に設立された。
オンラインでおこなわれた技術説明会では、開発の狙いを大きく2つ示した。
1つは、ダイレクト感ある走りと上質なドライブフィーリングの実現だ。
2.5L THSに比べて、よりスポーティで躍動的な走りを目指したのだが、それでもクラウンというブランドとしての上質さからは逸脱しないという点が、開発における大きなハードルだった。
もう1つは、パワーユニット全体の小型化とコスト削減の両立だ。
具体的なシステム構造は、フロント駆動用モーターの前後に、発進用のクラッチとエンジン切り離し用のクラッチを持つ。
湿式の多板式クラッチで、それぞれ5枚と4枚を採用した。
また、トランスミッションには6速オートマティックを採用している。
CVTやDCTなどを採用せず、またアイシンでFF用としてラインナップがある8速オートマティックでもないことに対して、「トルクコンバーターだが、クラッチ制御の応答性を高めることで、ダイレクト感のある走りが実現できた」と説明する。
「クラウンらしさ」とは?
技術的な課題は、エンジンルーム内での全長アップは絶対にできないことだ。
しかも、46.9kg-mという大トルクを発生するパワーユニットをFFレイアウトで実装するためには熱も大きな課題になったため、高電圧電動オイルポンプで流量を拡大した。
そのほか、駆動モーターは基本設計を見直して小型化し、またインバーターはトランスミッション直上に搭載することでインバーターとモーター間の接続ハーネスを削減した。
一方で、後輪を駆動するe-アクスルは、トヨタ「bZ4X」やスバル「ソルテラ」向けで量産しているモデルをベースに改良した。
具体的には、車速に違いによってギア比を最適化したり、バッテリーの電圧での対応をおこなっているという。
こうして前輪に2.4Lターボエンジン+1モーターハイブリッド、また後輪にe-アクスルを搭載する電気四駆となったが、走りのキモとなるのはこうした各種機器の協調制御にある。
発進クラッチでは、油圧センサーでリアルタイムに油圧を制御したり、エンジンと併用して駆動モーターを積極的に活用する。
そのうえで、トヨタが前後輪のトルク配分など、実車による走行実験を繰り返しながら「クラウンとしてのスポーティな走り」を追求していった。
どんな走り味なのか、実車での走行体験がいまからとても楽しみだ。