リラックスできるミニバンBEV シトロエンe-ベルランゴへ長期試乗 航続距離280km

公開 : 2022.08.02 08:25

愛着が湧く可愛さと、荷物を運べる頼もしさ

e-NV200に乗ったカップルとの出会いで、ユーザーや比較対象で価値観は大きく変わるのだと改めて認識した。筆者は大きな荷物を運ぶ機会が少ない。車内空間と引き換えに、大きな駆動用バッテリーが欲しいと考えてきた。

e-ベルランゴは、このボディサイズのBEVとしては突出して車内が広い。実用性では圧勝といえる。トヨタフィアットプジョーが提供している、兄弟モデルにも当てはまることではあるが。

シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)

テスラモデルXは大きな車内空間を備えた、7シーターではある。ガルウイング・ドアもカッコいい。それでも、シンプルでスクエアなデザインや、使い勝手に優れたスライドドアと立方体状の荷室を備えるe-ベルランゴの方が、筆者には魅力的に映る。

キア・ニロEVのような未来感や上質さはないかもしれないが、ミニバンの便利さには代えがたいものがある。着座位置が高く、運転席からの見晴らしは良好。舗装の剥がれた穴も発見しやすい。

ボディに施されたオレンジ色のトリムや、専用のフロントグリルも可愛い。ペットのように、愛着が湧いてしまう。それでいて、沢山の荷物を運んでくれる頼もしさがある。

これまでに、グレートブリテン島の端まで旅行をし、芝刈り機を修理店にも運んだが、常に荷室には余裕が残っていた。容量はリアシートを起こした状態で775L。折りたためば3500Lへ拡大できる。

心からリラックスできるBEV

ダイレクトな操舵感も美点。都市部でも運転しやすい。しかも、価格は内容を考えればお手頃と呼べる範囲にある。

電費効率は、市街地中心に走れば良好。高速道路では空気抵抗で急速に悪化するものの、僅かにスピードを緩めることで改善できることを発見した。

シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)

毎回、e-ベルランゴでの発進は、エコ・モードを選び回生ブレーキを強くすることから始まる。できる限り穏やかに加速し、高速道路では100km/h以上は出さない。アクセルペダルの扱いには、慎重さが欠かせない。

確かに速くはない。しかし、穏やかに走るe-ベルランゴの車内は、心からリラックスできる。日常の暮らしにも影響するように思う。

普段使いのミニバンとして選ぶには、ある程度の妥協は必要だろう。気軽に高速道路を走ったり、気ままに遠くは目指せない。一方で、できないことではなく、できることに注目することで評価が変わることも事実。

現在の多くのBEVにはない長所が、シトロエンe-ベルランゴには備わっている。

シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)のスペック

英国価格:3万1995ポンド(約534万円)
全長:4753mm
全幅:1848mm
全高:1879mm
最高速度:135km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離:280km
電費:6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2440kg
パワートレイン:AC永久磁石モーター
駆動用バッテリー:50.0kWh
最高出力:138ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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