クルマの欠陥デザイン 自動車史に残る?設計ミス 23選 失敗から学ぼう

公開 : 2022.07.30 06:05

メルセデス・ベンツAクラス:魔のエルクテスト

1997年に発売されて間もない初代Aクラスは、スウェーデンの自動車雑誌『Teknikens Varld』誌が実施する安全性テストの結果、劣悪なイメージを与えられてしまう。このテストは、走行中、道路に飛び出してきたヘラジカなどの大型動物を避けるというシチュエーションで、「エルクテスト」と呼ばれるもの。繰り返しハンドルを大きく切ったAクラスは、泥酔した同僚のように片輪を浮かせ、大きく下腹を見せるという失態を演じた。

その結果、メルセデスが受けた評判は最悪のものとなった。同社は、重心の高いクルマには不向きだったサスペンションを調整し、エレクトロニック・スタビリティ・コントロール(ESC)を追加することで対応。こうした改良は後期モデルだけでなく、販売済みの1万7000台にもリコールで適用された。

メルセデス・ベンツAクラス:魔のエルクテスト
メルセデス・ベンツAクラス:魔のエルクテスト

ミニ・クラブマン:リアドアの位置

クラブマンは、BMW時代に突入したミニのハッチバックをより大きく、より広くしたモデルとして考案された。現行モデルはドアが4枚だが、初代(R55)は3枚だった。欧米仕様で助手席側にあたる車体右側に、「クラブドア」と呼ばれる小さなリアドアがついている。

先述のRX-8のように観音開きスタイルを採用(片側にだけ)したわけで、ドイツや米国などの左ハンドル市場においては、歩道側にドアが開くため比較的乗り降りがしやすい。しかし、生まれ故郷である英国は、日本と同様に右ハンドル市場である。

ミニ・クラブマン:リアドアの位置
ミニ・クラブマン:リアドアの位置

ハンドルの位置に合わせ、クラブドアを左側に配置するということも技術的に可能ではあったが、燃料タンクの位置を変更する必要があるため、ミニは嫌がった。

日産アルメーラ2.2D:騒音

日産が海外で販売する2代目アルメーラには、モデルによって2.2Lターボディーゼルが搭載されていた。そこそこのパフォーマンスを発揮するエンジンだが、乗員や周囲の歩行者にとっては信じられないほどうるさかった。

高速道路では、風切り音や路面からの騒音で目立たなくなるため、それほどひどくはない。しかし、一般道では、2000年に発売されたクルマとはいえ、到底受け入れられるものではなかった。

日産アルメーラ2.2D:騒音
日産アルメーラ2.2D:騒音

日産ジューク:ロールセンター

初代ジュークに関するプレス発表の中で、日産はロールセンターの高さを「コーナリング時のボディロールを減らすために可能な限り低くした」と述べている。しかし、一部のジャーナリストが指摘したように、実際にはロールセンターが低くなるにつれてボディのロールは大きくなるのだ。

ロールセンターの詳細を語り始めると紙面が足りなくなってしまうので割愛するが、「メトロノームの振り子の支点」をイメージするとわかりやすいだろう。これは、重りの位置(重心)とは異なる。ボディがロールする際に中心点となるものだ。

日産ジューク:ロールセンター
日産ジューク:ロールセンター

これはプレス側の誤解という解釈もできるが、ジュークは確かにボディロールが目立つ。特に190psを発揮する1.6Lターボエンジンを搭載した16GT FOURの場合だと、ロールを体感するには十分すぎるほど速い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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