聞き飽きないV型12気筒 フェラーリ250 GTE モータースポーツを支えた2+2 後編
公開 : 2022.08.14 07:06
フェラーリ初となったFRで2+2の250 GTE。英国編集部がオーナーズクラブのツーリングに同行し、その魅力に迫りました。
250 GTEの魂といえる3.0L V型12気筒
フェラーリ250 GTEの正式名称は、250グランツーリズモ・クーペ・ピニンファリーナ2+2。都市部のモーターショーではなく、1960年のル・マン24時間レースでお披露目されている。
シャシーはティーポ508型の進化系。1954年の250 ヨーロッパGTから継続登用されていた。また、カロッツェリアのボアーノ社とエレナ社がボディを手掛けた、250 GTクーペへも派生している。
250 GTEでは、2600mmというLWB仕様のホイールベースはそのままに、エンジンの搭載位置を200mm前方へ変更。フロントのバルクヘッドは300mmも移され、リアアクスルの前に充分な広さのリアシートを据える空間が捻出されている。
シャシーには縦方向の補強材が追加されていたが、オーバードライブ・ユニットを搭載する都合上、250 GTEではそれが省かれていた。フレームには、508Eと記されている。
サスペンションは、フロントがウイッシュボーンによる独立懸架式で、リアはトレーリングアームとリーフスプリングを用いたリジットアクスル式。ダンパーが前後に組まれる。
トランスミッションは、オーバードライブを備えたオールシンクロの4速マニュアル。ブレーキは、サーボ付きのダンロップ社製ディスクを採用した。
そして250 GTEの魂といえるのが、3.0LのV型12気筒エンジン。自動車ジャーナリストのデニス・ジェンキンソン氏は、V12でなければフェラーリのブランド像はここまで崇高なものにならなかっただろう、と語っている。
タイトコーナーを滑らかに素早く駆け抜ける
このエンジンの源流となるのは、1945年に技術者のジョアッキーノ・コロンボ氏が設計した1.5Lユニット。2+2の250 GTEでは、ティーポ128Eへと進化しており、トリプル・ウェーバー・キャブレターを載せ238ps/7000rpmを発揮した。
ちなみに、エンジンとシャシーにEが振られていたことが、2+2のクーペがGTEやGT/Eと呼ばれる理由になっている。
スティーブン・ピルキントン氏は、今回のクラブ・ツアーイベントに参加した13台の250 GTEのうち、5台のオーナー。娘のスージ・ピルキントン氏は、真っ赤なボディが眩しいシリーズ2の運転を、筆者に許してくれた。
最近レストアを終えたばかりで、コンディションは最高。ランチタイムの間、英国郊外の一般道を自由に走らせることができた。
イグニッションキーを時計回りに2度傾け、それから押し込むとコロンボ設計のエンジンが目覚める。運転席の座面が低く、フェラーリに包まれた感覚にれなる。
流れの良い道を走らせれば、本来の調子が顕になる。前後の重量配分は、ピニンファリーナ・クーペの250 GTの49:51と比べて55:45とフロント寄り。連続するタイトコーナーを弾くようには処理しないが、滑らかに素早く駆け抜ける。
サーボアシストされるブレーキが、進入時の自信を高めてくれる。ステアリングホイールもペダル類も、重すぎることはない。落ち着いて、ハイスピードで運転できる。この印象を素晴らしいものへ高めているのが、間違いなくフロントのV型12気筒だろう。