速く繊細で懐が深い 新型ホンダ・シビック・タイプR いち早く第6世代の助手席へ同乗
公開 : 2022.07.29 08:25 更新 : 2022.08.08 07:05
6代目へ進化を遂げたシビック・タイプR。英国編集部が体験したサーキットでの助手席試乗から、第一印象をまとめます。
重量バランスとレスポンスが極めて良い
「運転は難しくありませんよ」。きついシケインへ真新しいシビック・タイプRを侵入させながら、テストドライバーのティアゴ・モンテイロ氏がつぶやく。
「テールスライドのオーバーステア状態へ持ち込むのに、きっかけを与える必要はありません。重量バランスとレスポンスが非常に良いんです。このようなシケインを通過すれば、従来のタイプRから向上したことを強く感じられると思います」
今回、英国編集部はイタリアのタッツィオ・ヌヴォラーリ・サーキットで開かれた、6代目ホンダ・シビック・タイプRの助手席試乗会へ招かれた。ホンダの山本氏も、走行前のプレゼンテーションで同様の話をしていた。
「これまでのタイプRと比較して、大きく進化したといえるのがシャシー剛性と操縦特性。ステアリングとサスペンションもアップデートされ、より魅力的で自信を鼓舞する体験に繋がっています」
剛性の強化だけでなく、軽量化にも重点が置かれたという新しいタイプRだが、パワートレインにもしっかり手が入っている。2.0L 4気筒ターボガソリン・エンジンも改良を受けており、これまでで最もパワフルなシビックになった。
ターボは設計が新しく、冷却系も見直されている。エグゾーストの排圧を高めることで、レスポンスも向上させたそうだ。
シリアスに速く、繊細で懐が深い
助手席で観察する限り、モニター式メーターパネルに表示されるレブカウンターの勢いから、アップデートの効果がうかがえる。7000rpmのレッドライン目がけて鋭く吹け上がり、赤いシフトアップ・ライトが点滅する。
車内には、人工的に増幅されたエンジンとエグゾーストのノイズが充満する。車両自体の音を収録し、スピーカーからも響かせているらしい。
不足ないパワーが、絶え間なく線形的に生み出される。まるで自然吸気エンジンのように直線的で、レブリミット間際に、若干息苦しそうな素振りを見せる程度。
右足で踏むブレーキペダルはストロークが短く、滑らかに強力な制動力が立ち上がる。金属製のシフトレバーは卵型で握りやすそうだ。こちらもストロークが短く、サクサクと動いている。
揺るぎないグリップ力を保ちながら、タイトな右コーナーへ突っ込んでいく。軽快に抜けると、かげろうが路面を揺らす直線目がけて、再び一気に加速していく。
明らかに、シリアスに速い。四輪駆動のスーパー・ホットハッチ、メルセデスAMG Aクラスのような激しさではない。タイヤを削り取る、ターボチャージャーの爆発的パワーは放たれない。
前輪駆動のホットハッチがタイトコーナーの出口で見せる、身悶えるようなフロントタイヤの挙動も感じられない。6代目タイプRは繊細で懐が深い。それでいて、速く走るための作り手の意図を感じる。
サーキットをハイスピードで周回すると、それは明確。助手席でも。