ついに復活? 波紋のTVR、電動モデル3車種投入 グリフィスEV公式画像公開

公開 : 2022.07.28 20:05

発売が遅れた理由 本当に復活できるのか

英AUTOCAR編集部は、TVR会長のレス・エドガーと、投資家ダニエル・レイトンにインタビューを行った。まずは、レス・エドガー会長との質疑応答の内容を紹介したい。

――なぜ遅れたのでしょうか?

TVRのレス・エドガー会長
TVRのレス・エドガー会長

「工場改修に必要なウェールズ政府の承認と、パンデミックが重なったからです。政府の承認作業は徹底的なもので、実は、それがわたし達を救ってくれたのです。もし、すぐに承認が下りて、パンデミック前に発売していたら、今頃は倒れていたかもしれませんね」

――今、再出発する資金はあるのでしょうか?

「そうでなければ、今年、ウェールズ政府からの融資に相当な利子をつけて返済することはできなかったでしょう。これは遊びではありません。当社には資金と、持続可能なビジネスを構築するための長期計画があるのです」

――グリフィスV8は、今日の水準と比較すると少し古くなっていませんか?

「もし、3年前に発売していたら、今頃どうなっていたと思いますか?バンパーを変えたり、クロームメッキを施したりしたでしょうか?もともと正しいデザインで、古風な魅力があるのです。今も当時と同じようにゴージャスで、エンジニアリングも素晴らしく、必要な規制はすべてクリアしています」

――グリフィスのEV仕様の特徴は?

「ゴードン(・マレー)は、基本的に軽くて空気抵抗の少ないクルマをデザインしました。そのおかげで、バッテリーの重量を抑えつつ、航続距離を稼ぐことができるのです。TVRは、0-100km/h加速のタイムをコンマ1秒でも縮めるのではなく、卓越したハンドリングとエンターテインメント性を追求しています」

――静かなTVRというのは、的外れなのでは?

「もうすぐEVの時代がやってくる。誰もそれを止めることはできません。詳細は申し上げませんが、EVだからといって無音である必要はなく、その音も人工的なものであったり、増幅されたものであったりする必要はありません。エキサイティングなものであればいいのです」

――セダンとSUVの詳細がわかるのはいつ頃でしょうか?

「今はまだ初期段階です。計画があることを示したいのですが、計画は流動的である必要があります。スタイリングは進化していますが、成長を続けるためには、ブランドとその信頼を築き上げる必要があります」

投資家は何を考えているのか

ダニエル・レイトンは、TVRに大規模な投資をしているEnsorcia Automotiveの会長を務める人物。AUTOCARは、これまであまり語られてこなかったTVRとの関係や、ビジョンについて尋ねた。

――Ensorcia Automotiveとは、どんな会社なのでしょうか?

Ensorcia Automotiveのダニエル・レイトン会長
Ensorcia Automotiveのダニエル・レイトン会長

「グリーンリチウムのリーディングカンパニーです。世界各地でリチウムの権利を持ち、より安価で簡単、かつ環境負荷の少ないリチウムの抽出方法の特許を取得しています」

――自動車向けの資金はあるのですか?

「わたしは石油化学で利益を上げ、しばらく前に環境に優しい技術に注力するために手を引きました。今の会社は、数百万ドルではなく数十億ドル規模で計ることができます。今日まで、TVRに8桁(10億円以上)の資金を投入してきましたが、これはTVRを立ち上げるのに十分な額です。まだ必要なら追加投入しますが、もっと投資家を増やした方がいいかもしれません」

――なぜ、TVRなのでしょうか?

「多くの企業からリチウム供給について問い合わせがありましたが、自動車産業への供給は考えていませんでした。TVRは、その歴史と伝統、規模の小ささ、高級車市場にフォーカスしている点で、他とは一線を画していたのです。電動化された新しい世界ではやることは膨大にありますが、大きな可能性も秘めています。わたし達と比較するわけではありませんが、ルーシッド、リヴィアン、テスラは、その可能性を示してくれました」

――TVRが持つ英国ならではの伝統が、グローバル展開を妨げることはないのでしょうか?

「全くありません。TVRの心は常に英国にあります。しかし、『クール・ブリタニア』は世界中に響き渡るものであり、TVRはとてもクールです。時間と予算はかかりますが、このブランドは世界に売り込むことができるのです」

――フォーミュラEとの提携は、おそらくそのマーケティングの一環と思われますが、そこでレースをすることは可能なのでしょうか?

「フォーミュラEのレースをサポートすることで、わたし達が復活することを認知してもらう必要があったのです。レースはTVRのDNAの一部であることは確かです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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