現在の英国車のベスト アストン マーティンDBX707へ試乗 ノーマルからGT3級の変貌
公開 : 2022.08.05 08:25 更新 : 2022.11.30 13:32
速度感を掴みにくいほど巧みなシャシー制御
その結果、DBX707は0-100km/h加速を3.1秒でこなす。0-160km/h加速も、7.4秒だという。大きなSUVでありながら。
低回転域を除き、9速ATが選んでいるギアに関わらず、DBX707はロケットのように加速する。専用のセミバケットシートに、背中は強烈に押し付けられる。並外れた動力性能は、スーパーカーに匹敵するといって偽りない。
これほどの能力を備えていながら、シャシーは巧みに挙動を制御し、ボディ落ち着かせる。極めて巧妙で、スピード感を掴みにくいほど。
サスペンションのダンパーは、ビルシュタイン社製のダンプトロニックが組まれている。基本的には通常のDBXと同じもので、長周期の揺れをしなやかに吸収するが、内部のバルブが改められ引き締まった印象だった。
DBX707は、印象的なまでに路面へしなやかに追従し、トゲトゲしい振動は一切伝わってこない。専用の、巨大な23インチ・アルミホイールを履いていても。シャシー・チューニングが、見事に機能している証拠といえる。
足まわりには、高価な液体封入式のハイドロブッシュも採用。ステアリングの精度を下げることなく、ストラットを路面からの入力に応じて柔軟に前後へ動かし、見た目からは想像し難い精度や上質さに結びつけているという。
ブレーキは、カーボンセラミック・ディスクが標準装備。強力な制動力を得られるだけでなく、バネ下重量は4本合計で40.5kgも削っている。
機敏な身のこなしと懐の深い操縦性
この内容だから、DBX707が優れていないわけがない。実際に走らせれば、操縦性も素晴らしい。シャシーバランスに優れ、コーナリングラインを自在に調整できるSUVに仕上がっている。
アストンマーティン・ヴァンテージやDBSに、この四輪駆動システムが搭載されても良いのでは、と感じてしまう。大々的な改造が必要になるとはいえ。
トランスミッション・トンネルには、フェラーリのマネッティーノにも似たドライブモード・セレクターが付いている。4種類から選べるが、基本的にはコンフォートとスポーツの2つで充分かもしれない。
特にスポーツ・モードを選ぶと、シャープなターンインと、しなやかなリアアクスルの挙動を味わえる。フロントアクスルが主導気味のコーナリング・スタンスは、極太のトルクを与えることでリア側へ推移させることもできる。
アクティブ・アンチロールバーの仕事ぶりも素晴らしい。ドライブモードに関わらず乗り心地を向上させているだけでなく、旋回中はロールセンターをボディ後方へシフトし、機敏な身のこなしを実現させている。
カーブへの進入時は、タイトでレスポンシブな回頭性を発揮。脱出に向けては、懐の深い操縦性でリアタイヤのスライドも許してくれる。アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオにも近いといえそうだ。