往年のビッグサルーンを彷彿 シトロエンC5 X PHEVへ試乗 上級グランドツアラーの再起

公開 : 2022.08.10 08:25  更新 : 2022.08.10 22:27

ファストバックのクロスオーバー、C5 X。DSからC6へと続いたビッグサルーンの姿が重なると、英国編集部は評価します。

往年のビッグサルーンと重なるシルエット

かつてのフランスの高速道路は自由だった。スピード違反を捕まえる警察のバイク部隊もいなかった。素晴らしい自動車が誕生する環境が整っていた。

そんな土壌で生まれたのが、ビッグ・シトロエン。ドイツや英国の上級サルーンとはまったく異なるスタイリングの、エレガントなクルマだった。時速160km/h以上での走行もいとわず、ライバルよりしなやかで安定していた。

シトロエンC5 X PHEV 225 シャイン・プラス(英国仕様)
シトロエンC5 X PHEV 225 シャイン・プラス(英国仕様)

ビッグ・シトロエンの系譜は、DSからCX、XM、C6へと代を重ねてきた。60年間に渡って、独自の技術とドライブフィールを提供してくれた。だが悲しいことに、C6の後継モデルは生まれなかった。これまでに10年ほどの空白があった。

シトロエンは、拡大しない輸出市場と膨らむ開発コストに悩んでいた。減価償却の早さにも。シトロエンのマーケティング部門は、その問題を認知していた。

優れない信頼性が価値を低め、ブランドの評判も悪くした。ビッグ・シトロエンという伝統を絶やし、売れるクルマを作らざるを得なかったのだろう。

しかし、2022年に再起を果たした。新しいシトロエンC5 Xの全長は4805mmもある。5ドアのファストバック・サルーンで、滑らかなシルエットは従来のモデルと重なって見える。

現代のステーションワゴンとSUVの強みを融合させたと、シトロエンは主張する。優れた空力特性を維持し効率性を高めつつ、ゆとりある車内空間を実現させている。

入念に設定されたグレード構成と価格

C5 Xがベースとするプラットフォームは、ステランティス・グループのEMP2。新しいプジョー308も採用している、多能なものだ。

過去の開発コストへの反省を活かしてか、コンポーネントも実績があるグループ内の既存品を積極的に利用している。見た目は個性的でありながら、従来のシトロエンとは姿勢が異なる。

シトロエンC5 X PHEV 225 シャイン・プラス(英国仕様)
シトロエンC5 X PHEV 225 シャイン・プラス(英国仕様)

さらに、Dセグメント市場に受け入れられるよう、入念にグレード構成や価格が設定されている。近年はこのクラスのサルーン人気が低調で、手を引くブランドもあるけれど。

C5 Xの英国価格は、ガソリンエンジンのベーシックグレードなら2万8000ポンド(約467万円)を切る。プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のトップグレードでも、4万ポンド(約668万円)は超えない。

さらに英国の場合は、C5 Xは完全に受注生産。過剰に市場へ投入されることはない。減価償却を早めてしまう、リース販売は検討されていないという。

トリムグレードには、センス・プラス、シャイン、シャイン・プラスという3段階が用意された。シャイン・プラスが最上級だが、どのグレードを選んでも装備は驚くほど充実しており、不満はないだろう。

インテリアはスタイリッシュに仕上がっており、製造品質も高い。ダッシュボードには、インフォテインメント用の大きなタッチモニターが据えられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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