ホンダの切り札 VTECのタイプR シビック/インテグラ/アコード 3台を振り返る 後編

公開 : 2022.08.21 07:07

かつて、ハッチバックのシビック以外にも存在したタイプR。英国編集部が、VTECエンジンの魅力を振り返りました。

想像以上にシリアスなインテ・タイプR

EK9型ホンダシビック・タイプRのレブリミットは、8600rpmに設定されている。だが、アクセルペダルを煽るとメーター上は9000rpmをかすめた。

鋭く吹け上がり、スピードメーターへ目を配るタイミングを掴みにくい。フロントガラス越しに前方を確かめるか、激しく上下するレブカウンターを確かめるか。

レッドのホンダ・アコード・タイプRと、ホワイトのホンダ・シビック・タイプR、ブラックのホンダ・インテグラ・タイプR
レッドのホンダ・アコード・タイプRと、ホワイトのホンダ・シビック・タイプR、ブラックのホンダ・インテグラ・タイプR

英国の郊外で許される97km/h以下の速度でも、高まるサウンドに聞き惚れる。エンジン音が車内に充満する。オックスフォードシャーで取材していても、日本の群馬県に伸びる峠道が頭に浮かぶ。アスファルトの傍らに、落ち葉が落ちているような。

欧州の古いホットハッチのように、挙動が安定しないわけではない。路面へしなやかに追従し、アスファルトの凹凸を緩やかに揺れながら処理する。軽くて扱いやすい。カーブへ飛び込んでも安定性は失われにくい。空想を交えながら運転できる。

アクセルペダルを急に戻しても、不意にオーバーステアへ転じる様子はない。ハードブレーキングで、ステアリングホイールに気を配る必要もない。

シャシーは間違いなく敏捷。能力を存分に引き出せるが、華やかさという点では控えめのようだ。ホンダらしい。

シビック・タイプRより加速力は明確に勝る

続いて乗り換えた、ブラックのDC2型インテグラ・タイプRが今回の3台では最も古株。登場は1995年で、ホンダNSX タイプRに続く2台目の「R」だった。そして、内容は想像以上にシリアスだった。

ドアを開くと、背もたれが大きく寝かされたバケットシートが意表を突く。ルーフは低く、シビックの派生モデルではない。本物のクーペとして作られている。

ホンダ・インテグラ・タイプR(DC2/1995〜2001年/英国仕様)
ホンダ・インテグラ・タイプR(DC2/1995〜2001年/英国仕様)

B18C型の4気筒エンジンの印象は、シビックより強烈。チタン製のシフトノブで操る、5速MTのフィーリングもソリッド。タイプRとして増強された雰囲気を、ボディの隅々から感じる。

EK9型より0.2L大きい、1.8Lの排気量を持つだけあってたくましい。アクセルレスポンスも鋭い。VTECのカムが切り替わる領域を求めずとも、不満ない動力性能を引き出せる。それでも、回さずにはいられないが。

アクセルペダルのストロークは、シビックより長い。カムが切り替わる、6000rpmのポイントは同じ。車内へ響くノイズは小さくても、加速力は明確に勝る。レブカウンターの針が9000rpmへタッチする間際まで、勢いよく加速し続ける。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・ボーモント

    Will Beaumont

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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