ホンダの切り札 VTECのタイプR シビック/インテグラ/アコード 3台を振り返る 後編
公開 : 2022.08.21 07:07
コーナリングの堪能に必要なすべての要素
ペースを速めていくと、アコードとシビックがカーブで感心するほどのグリップ力を発揮し、粘り強くラインを保持するのに対し、インテグラは違う素質を備えているのが見えてくる。恐らく、意欲的なLSDの設定によるものだろう。
アクセルペダルを緩めれば、デフが効果的に機能し旋回力が一層高まるのがわかる。ノーズの向きが変わったら、右足へ徐々に力を込めていく。狙ったラインを辿りながら、素早く脱出していける。
エンジンは不足なくパワフルで、ペダルのストロークは充分。フロントタイヤへ過度に負担を掛けることなく、必要な推進力を細かく調整できる。
タイヤが均等に発揮するグリップ力と、ボディロールが抑えられたシャシー、感触豊かなステアリングホイールと低いシート位置が生む、豊かなフィードバック。コーナリングを堪能するために必要なすべての要素が、インテグラ・タイプRに与えられている。
今でも特別なVTECユニットの刺激
今回集まった1990年代の3台のホンダで、最も強い印象を与えてくれたのはインテグラ・タイプRだった。高性能モデルとして最も妥協の少ない、低く滑らかなクーペ・フォルムから得られる想像通り。峠道を駆け回るのに最適といえるだろう。
だが、残りの2台も魅力には欠かない。アコード・タイプRの実用性は、ネオ・クラシックとなった今では、さほど重要ではないかもしれない。それでも、純粋に運転を楽しめる能力に優れたパッケージングが融合していることは、間違いなく強みといえる。
シビック・タイプRはより楽しさを追求した、若々しさがある。ホットハッチとしてドライバーが望む体験を、鮮やかに味わわせてくれる。日本製の高性能モデルへ抱く、期待通りともいえる。
最も驚くべき事実は、この3台の仕上がりが見事に異なっているということ。いずれも同時代に生まれた前輪駆動のタイプRではあるが、ホンダはそれぞれに異なる設計と調整を与えたのだろう。
一方で、比較的控えめなスタイリングでありながら、並外れた感覚や運動神経を秘めているという点で共通している。タイプR的な個性として。
小さなハッチバックと4ドアサルーン、2ドアクーペとを結びつける切り札こそ、高回転域まで爽快に吹け上がるVTECユニットだ。エキゾチックな刺激を生み出す、核心部分は今でも特別な存在だった。
アコード、シビック、インテグラ 3台のタイプRのスペック
ホンダ・アコード・タイプR(CH1/1998〜2002年/英国仕様)のスペック
英国価格:2万2995ポンド(新車時)/8000ポンド(約134万円)以下(現在)
販売台数:1980台(英国仕様)
全長:4495mm
全幅:1750mm
全高:1430mm
最高速度:228km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:1405kg
パワートレイン:直列4気筒2157cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:212ps/7200rpm
最大トルク:21.8kg-m/6700rpm
ギアボックス:5速マニュアル
ホンダ・シビック・タイプR(EK9/1997〜2000年/英国仕様)のスペック
日本価格:199万8000円(新車時)/2万ポンド(約334万円)以下(現在)
販売台数:約3万台
全長:4180mm
全幅:1695mm
全高:1360mm
最高速度:180km/h
0-97km/h加速:6.4秒
燃費:10.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1090kg
パワートレイン:直列4気筒1595cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:185ps/8200rpm
最大トルク:16.2kg-m/7500rpm
ギアボックス:5速マニュアル
ホンダ・インテグラ・タイプR(DC2/1995〜2001年/英国仕様)のスペック
英国価格:2万2500ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約417万円)以下(現在)
販売台数:約3万台
全長:4380mm
全幅:1695mm
全高:1320mm
最高速度:233km/h
0-97km/h加速:6.5秒
燃費:11.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:1120kg
パワートレイン:直列4気筒1797cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:190ps/8000rpm
最大トルク:18.0kg-m/7300rpm
ギアボックス:5速マニュアル