ブランド新時代を切り拓く キャデラック・リリックへ試乗 欧州の競合に伍するBEV 後編

公開 : 2022.08.12 08:26

アメリカの上級ブランド、キャデラックからBEVの大型SUVが登場。欧州の競合へ驚異となるのか、英国編集部が評価しました。

モダンでプレミアム感に溢れる車内

キャデラックの新しいBEV SUV、リリック。オーディオには、オーストリアの上級ブランド、AKGの19スピーカー・システムを採用。33インチのタッチモニターの下には、エアコンなどの実際に押せるハードボタンが並ぶ。

センターコンソールは宙に浮いたような造形で、ドライブ・コントローラーが手元に来る。ウッドトリムはレーザーカット処理され、バックライトでやんわり照らし出される。インテリアのすべてが、モダンでプレミアム感に溢れている。上質で洗練された空間だ。

キャデラック・リリック RWD(北米仕様)
キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

シート自体は柔らかく、座り心地も上々。筆者に丁度いいドライビングポジションを取ることができた。リアシート側も広々としており、荷室容量は793Lもある。

リリックで選べるパワートレインには、2種類が用意されている。今回試乗したのはエントリーグレードに当たり、後輪駆動のシングルモーターだった。最高出力340ps、最大トルク44.8kg-mを発揮するという。

ツインモーターの四輪駆動も選べる。こちらの最高出力は500psと、大幅にパワフルになる。

フロア下に敷き詰められる駆動用バッテリーは、実容量で102kWhと大きく、航続距離は後輪駆動版で502km。キャデラックの技術者は、WLTP値に準じたテストならもう少し伸びるだろうと話していた。

急速充電能力は、最大で190kW。驚くほど速いとまではいえないものの、悪くない数字ではある。

リラックスしたリリックの雰囲気

車体が大きいこともあり、リリックの車重は2585kgもあるが、シングルモーターでもアクセルレスポンスは良い。滑らかに、勢いよく発進できる。

とはいえラグジュアリーSUVとして、何より目指されているのはプレミアムな質感だろう。アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載し、BEVの基準で比較しても、車内は至って静かだった。

キャデラック・リリック RWD(北米仕様)
キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

ステアリングホイールの裏側には、回生ブレーキの効きの強さを選べるパドルがある。実際にどの程度変化するのか、今回はじっくり試すことができなかったけれど。

少なくともデフォルト設定では、非常に強く効く。アクセルペダルだけで発進から停止までまかなえる、ワンペダルドライブに近い運転ができるほど。リラックスしたリリックの雰囲気にも、合致しているように感じた。

サスペンションは良く仕事をし、テストコースの人工的に荒らされた路面を巧みに処理。実際の道路環境にあるような、鋭い隆起部分や橋桁の継ぎ目に動じることはなかった。うねりも上手に沈め、全体的にもの静かな印象への影響は最小限に抑えていた。

穏やかな個性を反映してか、ドライビング体験で得られる興奮は控えめ。アメリカ車らしいといえるが、ステアリングのレスポンスはダイレクト感に少々欠ける。

欧州へ導入される場合は、市場の特性に合わせてチューニングを受ける可能性はある。だが、スポーツサルーンのCT5-V ブラックウィングのような感触は期待しない方が良い。そもそも、SUVとしてクルマのベクトルが異なる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ブランド新時代を切り拓く キャデラック・リリックへ試乗 欧州の競合に伍するBEVの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事