最新ラグジュアリー・サルーンを長期テスト メルセデス・ベンツSクラス S 580e(1)
公開 : 2022.08.21 09:45
ドイツの名門ブランドが提供する、最上級PHEVの完成度は? ラグジュアリー・サルーンの実力を長期テストで確かめます。
30年前のSを超える充足感は得られるか
今から30年ほど前、AUTOCARの長期テスト車にメルセデス・ベンツSクラスが加わっていた。W140型のS 500だった。シルバーのボディで、エンジンは5.0LのV8。実際にステアリングホイールを握れたのは、一部の編集部員に限られた。
丁度その頃、ジャガーがデイムラー・ダブルシックスを発売。高級サルーン2台による比較試乗の企画が組まれ、筆者もSクラスを運転することができた。クルマを借りた晩に、現在の妻を助手席に乗せてドライブしたことが忘れられない。
その日以来、Sクラスへ恋に落ちてしまった。発表間もないフラグシップ・サルーンで、早々に直接比較を実現できたことは、自分の経歴として大きな成果にもなった。
そのW140型は筆者にとっての高級車、特にSクラスとしての基準を築いた。より速いモデルも、静かなモデルも、暮らしやすいモデルも存在した。だが30年前のSクラスを超えるほど、至福の充足感を与えてくれたクルマは今まで出現していない。
果たして最新のSクラス、W223型は、筆者の印象を塗り替えることができるだろうか。ブランドのフラグシップとして、同社が実現できるすべてが盛り込まれている。数か月を掛けて、じっくり味わうことが許されている。
オプション追加が不要なほどの充実装備
クルマの正式名は、メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアムプラス・エグゼクティブ。英国ではロングホイールベース版の最上級グレードに当たり、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)でもある。
駆動用モーターだけで、最長101kmが走行可能とうたわれる。筆者の自宅にはBEV(バッテリーEV)用の充電器が備わっており、長距離移動時はガソリン代を節約できる。静かなEVモードで、静かなクルージングにも浸れるはず。
メルセデス・ベンツ側は、ボディとインテリアのカラーコーディネートのほか、オプションを追加することも提案してくれた。そこで本来の趣を壊さない範囲で、僅かに個性を加えてみることにした。
ボディは、セレナイト・グレーメタリック。インテリアは、ブラック・レザーを指定した。特に悩むようなものではなかったけれど。しかし、オプションは何も追加していない。感心するほど標準装備が充実していて、付け足す必要がなかった。
30年前のW140型に備わっていて、新しいW223型にないものといえば、V8エンジンだ。2022年の末に登場予定にあるメルセデスAMGのSクラスには、搭載されるはずではある。
長期テスト車のS 580e Lに載っているのは、3.0L直列6気筒ガソリンエンジンで、最高出力は367ps。そこへ、150psの電気モーターが組み合わされている。