電動化スーパーカーの不安を払拭 フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノへ試乗 前編
公開 : 2022.08.13 08:25
マラネロ最新のV6ハイブリッド・スーパーカー、296 GTB。英国編集部が一般道でハードコア仕様の仕上がりを確かめました。
フェラーリF8トリブートの後継モデル
内燃エンジンはスーパーカーにとって魂のようなもの。気持ちを高ぶらせないユニットは、許されない選択だろう。
特にフェラーリは、イタリアン・エキゾチックの代表といえるブランド。英国の公道で初めて実力を確かめた296 GTBへ、当初は僅かな懸念を持っていたことは確かだ。
最新のミドシップ・モデルは、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)化や250 LMに影響を受けたというスタイリングが話題の中心になりがち。3.0LのV型6気筒エンジンへは、さほど注目が集まっていないように思える。
フェラーリは、これまで公道用モデルへV6エンジンを搭載してこなかった。病を患った息子のための、ディーノを除いて。
1973年以降、シャシー中央に主力として積まれてきたのはV8エンジン。技術者のジュゼッペ・ブッソ氏がアルファ・ロメオのために生み出した傑作のような、輝かしいユニットに仕上がっているのかという疑問が、筆者にはあった。
296 GTBの前任となるのが、フェラーリF8トリブート。車重は35kg増えているにも関わらず、シリンダー数はダウンサイジングされ2本少ない。パワーステアリングも、電動油圧式から感触を届けにくい電動機械式へ変更されている。
リアアクスルに搭載された駆動用モーターを完全に制御下へ置くため、ブレーキもバイワイヤー方式が取られている。モノコック構造は、マセラティやマクラーレンとは異なり、カーボンファイバー製ではない。
数あるスーパーカーで最も完成度が高い
事実を並べていくと、296 GTBへの懸念は大きくなっていく。ところが、恐らくマラネロがこれまでに仕上げてきた数あるスーパーカーでも、最も完成度が高いといって良さそうだ。
断言できない理由は、今回試乗したクルマが、アセット・フィオラノというハードコア・パッケージで仕立てられていたから。英国価格2万5920ポンド(約427万円)のオプションとなり、素の状態とは異なっていた。
フェラーリの英国代理店でレーシングチームを営んだ、マラネロ・コンセッショネア社にちなんだ、ロッソ・コルサとベイビー・ブルーのカラーリングだけではない。ボディは多くのエアロキットで武装されている。
ポリカーボネート製のエンジンリッドや、カーボン製ドアパネルなどで軽量化にも余念はない。かなり鮮烈な雰囲気を放っている。
フォードGTも採用する、磁性を帯びたフルードを用いたMR流体ダンパーも装備される。特性が活きる速度域は相当に高く、日常的な環境では乗り心地は少々過酷。快適とは感じられないだろう。
ポルシェ911 GT3のオーナーなら、このハードな乗り心地を想像できるはず。筆者がオーダーするなら、特別なMR流体ダンパーをチョイスすると思うが、一般道での評価ならノーマル・ダンパーの方が有利かもしれない。
少なくとも、発表イベントが開かれたスペインの平滑なアスファルトでは、素晴らしい喜びを与えてくれたセットアップではある。だが、英国の一般道とは異なる。