【詳細データテスト】アウディSQ5 洗練された速さ 鋭くないが心地いい操縦性 乗り心地には難あり

公開 : 2022.08.13 20:25  更新 : 2022.09.06 05:53

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

アウディは2020年秋、Q3スポーツバックやE-トロン・スポーツバックに連なるSUVデザインの最新版として、Q5スポーツバックを発表した。SUVクーペとして市民権を得ることになる、トラディッショナルなSUVより速そうな外観のそれは、なだらかに後方へ続くルーフラインによって、シルエットのボクシーさが減じている。

デザイン手法として、それ自体は別に目新しいものではない。興味深く、もしかしたら混乱を招くかもしれないのは、それをスポーツバックと呼んだネーミングだ。アウディは同じ呼称を、5ドアハッチバックにも、ファストバックもしくはリフトバックスタイルのセダンやGTカーにも用いているのだから。

欧州市場向けSQ5は、基本的にディーゼルのみ。ライバル勢がガソリン/ディーゼル両方のパフォーマンスモデルを用意しているのに比べると、残念な設定だ。
欧州市場向けSQ5は、基本的にディーゼルのみ。ライバル勢がガソリン/ディーゼル両方のパフォーマンスモデルを用意しているのに比べると、残念な設定だ。    LUC LACEY

また、Q5スポーツバックは、バンパーのデザインが異なるぶんだけ、スタンダードなQ5より全長でわずかに上回る。空力性能も多少はいい。しかし、全高そのものが低くなっていないと聞いたら、おそらく驚きを覚えるだろう。

エンジンのラインナップは、Q5もQ5スポーツバックも変わらない。ガソリンもディーゼルも、さらにはガソリンPHEVも設定され、大半が4気筒だ。

ただし、SQ5はほかのQ5ファミリーとメカニズムが異なる。唯一、6気筒搭載モデルなのだ。3.0LのV6で、日本などでは354psのガソリンターボを積むが、欧州ではディーゼルツインターボで、342ps/71.3kg-mを発生する。

ライバルたちは、ファミリーサイズSUVのホットモデルにガソリンとディーゼルをどちらも用意している。ところがインゴルシュタットは、仕向け地によって投入するエンジンを変えていて、少なくとも英国では、ディーゼルが嫌なら買わなくていいです状態となっている。それはSQ5だけでなく、S4やS5、S6でも同様だ。

このV6TDIユニットに続くのは、8段トルクコンバーターATと、ハルデックス式4WDシステム。7段DCTと合わせてQ5の4気筒モデルに採用される、クラッチベースの自動切り替え式インテリジェント4WDではなく、昔ながらのアウディ好きが「これこそ正真正銘のクワトロだ」としている機械式センターデフを用いた方式だ。

ドライブトレインとシャシーの仕様は、どのバージョンを選ぶかによって異なる。テストしたベーシックなSQ5には、ハードなローダウンスプリングと、標準タイプのアダプティブダンパーが備わる。アウディによればS専用チューンだというそれは、Q5のSラインとは異なるもので、通常のQ5より30mm車高が低くなる。

これが上位機種のSQ5ヴォルスプラングになると、車高調整式アダプティブエアサスペンションが与えられ、機械式のトルクベクタリング機構付きスポーツリアディファレンシャルも奢られる。ほかにもさまざまなデバイスが加わるが、そのぶん価格は1万5000ポンド(約248万円)も高くなる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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