【詳細データテスト】アウディSQ5 洗練された速さ 鋭くないが心地いい操縦性 乗り心地には難あり

公開 : 2022.08.13 20:25  更新 : 2022.09.06 05:53

走り ★★★★★★★★☆☆

SQ5スポーツバックのディーゼルエンジンは、この上なく感情むき出しで回り、パフォーマンスSUVとして最速の走りをもたらすようなパワーユニットではない。そうではあっても、速さとフレキシブルさ、洗練性と現実的な効率を兼ね備え、電動化が進んでいる2022年現在にあって、いまなお魅力的だ。

トルクコンバーターATと機械式センターデフとの組み合わせは、パワーの立ち上がりをややソフトにするところがある。そこにきて、ターボエンジンのパワーデリバリーには時としてけだるさがある。

トルコンATと機械式センターデフには、DSGと電子制御クラッチ式より作動のラグがあるものの、慣れてしまうと楽しい。タイム重視ならSモードもいいが、Dレンジで走ったほうがこのクルマの美味しいところを味わえる。
トルコンATと機械式センターデフには、DSGと電子制御クラッチ式より作動のラグがあるものの、慣れてしまうと楽しい。タイム重視ならSモードもいいが、Dレンジで走ったほうがこのクルマの美味しいところを味わえる。    LUC LACEY

そのため、コーナー中盤でスロットルペダルを踏み込むと、ドライブトレインは小休止したのちに、4WDカップリングのフリクションに打ち勝ってわずかながら力を誇示するように感じられる。その後は駆動力が放出されて、それに伴いステアリングを戻せば、あとは四輪の相対速度が均一になっていく。

現代のパフォーマンスカーのパワートレインとして、確かにこれはもっとも歯切れよく、レスポンスに優れたものではない。そうはいっても、鈍くてぎこちないようなものでもない。ある程度の機械的な誠実さや一体感のあるキャラクターもあり、大型の上級4WDとしてはなかなか好ましい。慣れるとなかなか楽しめるはずだ。

パフォーマンスそのものに関しては、その強みをしっかり発揮できる。とりわけ、低回転から高めのギアで引っ張ったときがそうだ。右足でペダルを踏み込んでいくと、エンジンサウンドはデジタル音を添加しているのが明らかにわかるのだが、不愉快なものではない。おそらく、魅力に欠けるV6ディーゼルのサウンドを、耳に心地よいものにするには十分な程度の演出だ。スピードに関しては、求めればかなりのものが得られる。

ゼロスタートでの加速は、おそらくメルセデスAMGやアルファロメオのガソリンエンジンを積むライバルには及ばない。それでも、4速での48−113km/h加速は5秒フラット。なんとこれは、数週間前にテストしたポルシェカイエン・ターボGTより速いのだ。

パワートレインが本領を発揮するのは、ATセレクターをDレンジに入れたまま走るときで、ギア選択のロジックがエンジンを低めの回転で精力的に使い、その力強さを見せつける。

Sモードでは、その魅力がやや減ってしまう。各ギアを長めに引っ張った、大トルクのディーゼルに相応しくない変速を行うのだ。これはおそらく、とにかく加速タイムを重視したセッティングになってるのだろう。

シフトパドルを用いるマニュアルモードでは、当然ながら任意のギアを選択できるのだが、その入力へのレスポンスはまずまず悪くない。

タイヤは、SUV向けのピレリ・スコーピオン・ヴェルデで、バリバリのパフォーマンス銘柄ではない。アウディのこの選択がマイナスに働いたのが、ブレーキテストのときだった。

制動力は期待したほどみごとなものではなく、緊急ブレーキでは車体がもがいてスタビリティをわずかながら損なうようなこともあった。ただし、ブレーキペダルの踏力に対する効き具合の増し方は良好だ。

もしオプションの21インチホイールを選んだなら、標準の20インチとは異なり、もっといかにもパフォーマンス志向のロードタイヤが装着される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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