中古で買うなら? BMW Mモデル 海外の自動車ライターが選ぶ至高の1台

公開 : 2022.08.12 18:25

マット・サンダース:BMW Z3 Mクーペ(E36/8)

Z3 Mクーペは見た目がいいとは言えないし、1998年に登場したときはハンドリングを絶賛されたわけでもない。しかし、当時10代の僕にはE39 M5やE46 M3を所有するなんて想像もつかなかったが、小さなE36/8には、手を伸ばせば届きそうな何かがあるように思えた。

その秘密めいた感じが魅力を引き立たせたのだろう。しかし、実際にこのクルマを見れば、エンジニアが既製品のパーツをいじくりまわして作ったものであることがわかる。プロポーションもちょっとおかしい。だが、走らせてみると、不思議とまとまりがあるように感じられるのだ。醜いけれど、愛おしい。BMWが誇るMエンジンを搭載し、全長4mの乗用車としては常識の範囲をはるかに超えたパワーを発揮する。

BMW Z3 Mクーペ(E36/8)
BMW Z3 Mクーペ(E36/8)

安価で売られることはほとんどないけれど、今でも僕の目には魅力的に映る。

イリヤ・バプラート:BMW M 535i(E12)

現代のMモデルはどれも印象的で、ときには恐ろしく感じられることもある。しかし、M部門の輝かしい歴史から1つを選ぶとしたら、わたしは初心に帰るだろう。M1ではない。M1が最初とはいえ、その後のMモデルの礎を築いたわけではないからだ。

わたしが「M」と聞いて連想するのは、外見的には抑制が効いていて、パンチの効いたハンドリングを持ったクルマ。BMW 5シリーズをベースとしたM 553iである。

BMW M 535i(E12)
BMW M 535i(E12)

モータースポーツ社のオリジナルエンジンは使用されていないが、他のほとんどの点で、Mモデルのレシピが確立されている。当時の評論家はこのクルマを「滅茶苦茶に速い」と表現し(実際、M 635 CSiよりも速かった)、ハンドリングはまったく信頼に値するものであると評している。

比較的低いグリップ、癖のあるマニュアル・トランスミッションと自然吸気の直6は、21世紀のグリップ&パワーモンスターに対する完璧な「解毒剤」となるだろう。

スタイリングもまた、重要なものだ。ポール・ブラックが手がけたE12のデザインは、1990年代までのほぼすべてのBMWに影響を与えた。ボクシーだが完全なるプロポーションを持ち、4灯の丸型ヘッドライトと前傾した「シャークノーズ」グリルが特徴的である。Mモデルでは、わずかではあるが明白な改良が加えられ、意識の高いスタンスになっている。

ピアス・ワード:BMW 1シリーズM(E82)

1シリーズ・クーペは、わたしにとっての最高のMモデルだ。往年のAUTOCAR編集者クリス・ハリスとスティーブ・サトクリフがE46 M3について書いた記事(ESPをオフにするために「ウィンストン」を吸った、という忘れられない一節がある)を貪るように読んで育ったわたしだが、どれか1つ選べと言われれば、迷うことなく1Mを挙げる。

人気のあるMモデルは他にもあるし、本稿でもたくさん紹介されている。もっと価値の高いものもたくさんある。しかし、わたしが1Mをここに紹介したのは、経済的にも運転面でも比較的手が届きやすいからだ。

BMW 1シリーズM(E82)
BMW 1シリーズM(E82)

最高出力340psのツインターボ直列6気筒、電子制御メカニカルロック式LSD、そして2つの駆動輪。以上。シンプルなエンジニアリングのクルマであり、わたしから見れば、これぞBMWの頂点である。今や、重くて複雑なドライブトレインやサスペンション調整用のボタンなど、BMW(その他多くのメーカー)は自縄自縛に陥っている。

もっと純粋なドライビング・エクスペリエンスを持つクルマもあるが、1Mのペースと落ち着き、そして毎日の移動手段としての使い勝手の良さは、ライバルに真似できるものではないだろう。だから、今こそ欲しいクルマである。ライフスタイルを変えることなく、移動がより良いものになる。それが、わたしの考える夢のクルマだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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