「メルセデス・ベンツEQB」の知っておきたい話 250と350の違い EVになった7人乗りSUV(比較編)

公開 : 2022.08.12 12:10

メルセデス・ベンツEQBの試乗記です。「比較編」では、EQB 250、EQB 350のモーターの違い、走りの違いをレポートします。

どんなクルマ? モーターの話

ごく大まかな説明なら、GLAをベースにBEV(蓄電池式電気自動車)化した「EQA」と同じ手法で、GLBをBEV化したのが「EQB」である。

ただし、パワートレインが更新されている。1つは、FWDである「EQB 250」系のモーターが誘導型から同期型へ変更。

メルセデス・ベンツEQB 350 4マティック(デジタルホワイト/AMGラインパッケージ)
メルセデス・ベンツEQB 350 4マティック(デジタルホワイト/AMGラインパッケージ)    宮澤佳久

同期モーターはクルマの電動化では標準的であり、電費と中低速域の動力性能、回生発電効率の改善が主目的と思われ、WLTC総合モードにおける電力消費はEQAの180Wh/kmから147Wh/kmに向上。

同じ消費電力量で2割弱長い距離を走れる計算であり、満充電航続距離も423kmから520kmに伸びている。

もう1つの注目は、EQAにはない4マティック車、4WDとなる「EQB 350」系の展開である。

もちろん、BEVやシリーズ式HV(ハイブリッド車)では標準化しつつある前後独立駆動のツインモーター型。

おや? と思わせるのは、前輪駆動用モーターにEQAと同じ「誘導型」を採用したこと。

EQB 350 誘導モーター+同期モーター

その理由だが、主な駆動力を後輪駆動系とし、高速(高回転)域で有利な「誘導型」を前輪駆動系に副駆動力として用いている。

モーター出力は前輪用が勝るが、制御的には後輪駆動ベースの4WDと考えていいだろう。

メルセデス・ベンツEQB 250の前席内装(ローズゴールド/グレーパール:レザーツイン)
メルセデス・ベンツEQB 250の前席内装(ローズゴールド/グレーパール:レザーツイン)    宮澤佳久

なお、4WD車(EQB 350 4マティック)のWLTC総合モードの満充電航続距離は468km、電力消費は163Wh/kmと、ともにEQA 250を上回っている。

高効率化はEQBの大きな見所である。

電動は、即応性・制御精度が内燃機と段違い。モーター性能の及ぶ範囲なら如何様にもできる。

「どっかんターボ」的にも「先太り」的にもできる。でEQBが選んだ道は、徹底的にメルセデス車である。

例えば発進。じわりと踏み込めばクリープ制御から穏やかに立ち上がる。

メルセデス乗りなら、しっくり来る

ちょっと乱暴な踏み込みでも、ごく初期の加速は穏やかに、そして連続的に加速度を高める。

予兆感というか加速の立ち上がり反応から踏み込み量も掴みやすい。

メルセデス・ベンツEQB 350 4マティック(デジタルホワイト/AMGラインパッケージ)
メルセデス・ベンツEQB 350 4マティック(デジタルホワイト/AMGラインパッケージ)    宮澤佳久

それが無意識下のフィードバックで処理される感覚。どう操ればいいかアレコレ考える必要はない。

そういった対話感やドライバーの感性への適合はメルセデス車の特徴の1つだが、電動の制御精度の高さを活かして再現するとともに、雑味を減らした感じだ。

当然、メルセデス車から乗り換えたユーザーなら初乗りから何の違和感もなく馴染めるだろうし、メルセデス車の安心と信頼がBEVになっても何も変わっていないことに安堵するに違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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