日本のハマー トヨタ最大にして無名のSUV「メガクルーザー」 自衛隊でも愛用されるオフロード車とは

公開 : 2022.08.13 18:05

トヨタの大型SUVといえばランドクルーザーですが、1990年代にはもっと大きなモデルが存在していました。陸上自衛隊向けに開発された高機動車の民生型メガクルーザーは、今も昔もトヨタ最大のSUVです。

トヨタ最大のオフロード車

「和製ハマー」とも呼ばれる高機動車BXD10は、日本の陸上自衛隊のために1990年代に開発されたモデルで、米国のハマーなどとはまったく共通点がない。民生用のモデルはメガクルーザーと名付けられたが、高級スポーツカー並みの価格だったため、販売は低迷。日本以外の国でも、姿を見ることはほとんどない。

米国のハマーがEV(電気自動車)として復帰し、世界中の注目を集めているが、今回はトヨタが作った最大のオフロード車メガクルーザーと、陸上自衛隊仕様のBXD10について取り上げたい。

民生型のメガクルーザーと陸自仕様のBXD10について紹介する。
民生型のメガクルーザーと陸自仕様のBXD10について紹介する。

高機動車BXD10のルーツ

トヨタが4WD車を作り始めたのは、今のような巨大企業になるかなり前のことだ。戦後間もない1951年に開発された小型トラックAK10は、その後BJに発展し、自衛隊(当時は警察予備隊)の採用試験に臨んだが、三菱ジープに敗れた。

しかし、BJはランドクルーザーの原型となり、地球上のありとあらゆる地形を制覇する圧倒的なオフロード性能により、何世代にもわたってドライバーの心をつかんできた。米国のジープ、英国のランドローバーと並ぶ屈指のオフロード車として、世界的な支持を集めている。

トヨタBJ
トヨタBJ    AUTOCAR

政府からの要望

トヨタが陸上自衛隊向けに高機動車(HMV/High Mobility Vehicle)の開発に着手したのは1990年代初頭のことである。政府からの要望は、隊員を乗せたり、火砲を運んだりできる4WD車だった。

防弾仕様である必要はないが、普通のSUVよりもオフロード性能が高く、比較的安価に製造でき、故障が少なく、修理しやすいことなどが求められた。

トヨタBXD10
トヨタBXD10

民生型のコンセプト公開

高機動車BXD10の開発が進むにつれ、トヨタは政府機関やレスキュー隊など、どこにでも行けるオフロード車を必要とする人たちのために民生型の販売を考え始める。そこで、1993年の東京モーターショーで「メガクルーザー」というコンセプトを発表。年間1000台以上の生産が可能だと謳い、市場の反応を窺った。

「ショーで人気が出れば、作るかもしれない」と、メガクルーザーのプロジェクトチーフである野中氏は述べている。

トヨタ・メガクルーザーのコンセプト
トヨタ・メガクルーザーのコンセプト

小回りが利くよう採用された四輪操舵システム(4WS)は、モーターショーでもよく見えるように展示され、大きな注目を集めた。しかし、「目玉」展示はメガクルーザーだけではなかった。この年、トヨタが発表した6つのコンセプトカーのうちの1つ、RAV4は、発売されるや否やSUV市場を一変させたのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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