日本のハマー トヨタ最大にして無名のSUV「メガクルーザー」 自衛隊でも愛用されるオフロード車とは

公開 : 2022.08.13 18:05

トヨタで最もタフなSUV

トヨタはBXD10の開発において一切の妥協を許さなかった。ランドクルーザーの改良版ではなく、軍用オフロード車としてゼロから開発したのである。前後ポータルアクスルを装着し、ドライブトレインをボディに収め、トランスミッショントンネルを異常に広くするレイアウトで、地上高420mmを確保。1993年から1994年にかけて実証試験が行われ、1995年から全国の駐屯地への納入が開始された。

トヨタBXD10
トヨタBXD10

形式より機能

BXD10のインテリアは、まさに「形式より機能」のデザインである。背の高いフラットなダッシュボードには、スピードメーター、燃料計、温度計、そして警告灯がいくつか配置されているのみ。シフトレバーもスイッチもハンドブレーキも、シンプルなことこの上ない。

トヨタBXD10
トヨタBXD10

数字で見るBXD10

全長4910mm、全幅2150mm、全高2240mm。車両重量は2640kg。後部にはロングベンチシートを装着し、10人の隊員を乗せることができる。初期のモデルは、4.1Lターボディーゼル4気筒(最高出力155ps、最大トルク39kg-m)を搭載していた。

トヨタBXD10
トヨタBXD10

意外と小回りも利く

4.1Lディーゼルも十分にトルクフルだが、悪路を走るために必要なのはエンジンだけではない。BXD10はフルタイム4WD、センターデフロック付き2速トランスファーケース、タイヤ空気圧調整装置を備え、後輪を前輪と反対方向に最大12度回転させる四輪操舵システムも大きな特徴である。

その結果、回転半径はトヨタ・カムリよりも小さい5.6mとなっており、その巨体からは想像できないほど小回りが利く。

トヨタBXD10
トヨタBXD10

何でも屋

トヨタは何種類ものBXD10を製造した。人を運ぶために作られたものもあれば、地対空ミサイルの発射装置を運ぶためのものもある。また、衛星通信装置、対空レーダー、発煙筒なども搭載。さらに、航空機のエンジンを始動させるためのジェネレーター(写真)を搭載することも可能だ。

トヨタBXD10
トヨタBXD10

一方、海外では

BXD10とハンヴィー(写真)はよく似ているが、同じ部品は1つとてない。ハンヴィーの基本サイズは、全長4600mm、全幅2160mm、全高1800mm。6.2LのV8ディーゼルエンジンは152psを発生。地上高は約400mmで、BXD10とほぼ同等。フルタイム4WDでポータルアクスルも装備しているが、四輪操舵はメガクルーザーの特権だ。

また、ハンヴィーではラジエーターがほぼ水平に取り付けられているのに対し、BXD10は民生型と同様に垂直となっている。

AMゼネラル社が製造するハンヴィー
AMゼネラル社が製造するハンヴィー

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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