日本のハマー トヨタ最大にして無名のSUV「メガクルーザー」 自衛隊でも愛用されるオフロード車とは
公開 : 2022.08.13 18:05
メガクルーザー誕生
1996年1月、トヨタはBXD10を民生用に改良したメガクルーザー(BXD20)を発売した。足回りは共通だが、1993年のコンセプトを踏襲したフロントデザインが特徴である。パワーウインドウや布張りのシートなど、快適性を重視した内装も違いの1つだ。
陸自仕様と民生型の違いは?
BXD10とメガクルーザーの外観上の相違点はいくつかある。メガクルーザーでは角型ヘッドライト、トヨタのエンブレムを誇らしげに配したグリル、フルワイドバンパーなど、民生型ならではの意匠に。また、ボディパネルも比較的滑らかなものになっている。自衛隊仕様よりも製造コストがかかるが、トヨタの経営陣は十分に回収できると考えていたようだ。
「大きい」なんてもんじゃない
インテリアの雰囲気はハマーH1と似ているが、こちらも共通の部品は全く無い。H1が4人乗りであるのに対し、メガクルーザーは6人乗りである。前席は北アルプスのように大きなトランスミッショントンネルを挟んで2席、後席は2人掛けのベンチを別体シートが挟むという珍しいレイアウトだ。
幅2050mmの荷室には600kgまで積載可能。もはや、「大きい」という言葉では言い表せない。
数字で見るメガクルーザー
発売当初は4.1L直列4気筒ターボディーゼルエンジンを搭載し、最高出力155ps、最大トルク39kg-mを発揮。その出力を4速ATとポータルアクスルを介して、四輪に伝達する。
アプローチアングルは49度、デパーチャーアングルは45度、地上高は420mmとなっている。歴戦のランドクルーザーをも凌駕する性能であったが、東京の街中を国産軍用車で駆け巡るには、それなりの金額が必要だ。
センチュリーとメガクルーザー、どっち買う?
メガクルーザーは1996年、962万円という価格で発売された。同時期の1000万円近い日本車と言えば、V12エンジンを搭載したトヨタ・センチュリーやホンダNSXが挙げられる。巨大なエンジンを積んだダイダラボッチを手元においておくには、軽自動車よりもはるかにコストがかかるのだ。
レスキューミッション
メガクルーザーに価格競争力なんて必要なかったのかもしれない。というのも、日本ではメガクルーザーに相当するライバル車はいないし、センチュリーやNSXを買う人を主要な顧客として見ていたわけでもなかった。純粋に大型オフロード車を必要とするユーザーに、働くクルマとして使ってもらうための道具と想定されていた。
トヨタは自社のホームページで、「陸上自衛隊の人員輸送用車両として開発された高機動車を民生仕様に仕立てたモデルで、1996年1月に発売。極めて高い不整地走破性能を備えることが特長で、救難救助車、救急車、未開地域走破用などの用途向け車両である」と書いている。