「渋滞」を避けたい カーナビへのプローブ情報、この夏からどう変わる? 転機は大震災
公開 : 2022.08.13 05:45
2022年のお盆休みは、渋滞がちょっと違う? カーナビを対象にした渋滞回避のための実証実験が、こっそり全国に展開。これまでの紆余曲折とメリットを学びましょう。
夏休みのドライブに、カーナビがこっそり進化
道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)が7月に、カーナビを対象としたプローブ情報活用サービスの実証実験を全国へ拡大したと発表した。
これにより、VICSセンターが提供していたサービス対象路線は、従来の7万5767kmから16万7784kmへと倍増したことになり、カーナビを使った渋滞回避精度が飛躍的に向上する。
このプローブ情報を活用した実証実験は、VICS受信を可能とするカーナビを対象に提供されるもの。
すでに2020年4月からは関東1都6県(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川)で、2022年1月からは札幌エリア、愛知県、大阪府を加えて実証実験として実施されてきており、「利用者からの評価も極めて高かった」(VICSセンター)という。
そもそもプローブ情報は、クルマそのものが端末となって走行した実績から位置、速度、通過時刻などをデータとして収集するものだ。
VICSも一般道では光ビーコンによるアップリンクでデータ収集を行ってきた実績があるが、そのための車載機の普及率が低いこともあって思うようなデータ収集はできていなかった。
そこで、VICSセンターがもともと感知器を使って収集したデータに、各自動車・カーナビメーカーが収集しているプローブ情報を加えて補完・補強することで、データ密度を大幅にアップすることになった。
幹線道路以外の道路も活用できるようになり、これが全国展開されることで、よりスムーズな渋滞回避が可能となるわけだ。
その仕組みは? 転機は大震災の“通れる”情報
各自動車メーカーやカーナビメーカーから提供されるプローブ情報は、会員がクルマで走行することでそのデータがサーバーに蓄積される。
しかも、その収集に際しては感知器などの特別なインフラは必要がなく、車速パルスを持つ車両から発信されることもあって、トンネル内からも情報を発信できる。
また、今回提供されるプローブ情報は対象を乗用車だけに限っており、誤った情報が反映されにくいのも特徴だ。
ただ、実証実験に至るまでは紆余曲折があったようだ。
プローブ情報は各社がユーザーから独自に収集して来ており、それだけに競争領域として互いに融通し合うことはなかったのだ。
それが東日本大震災を1つの転機として、各社はプローブ情報を“通れる道路情報”として無料で公開するという過去にない取り組みを実施した。
そうした実績にもかかわらず、今回の取り組みに対しては「当初、各社の動きは鈍かった」と打ち明けるのはVICSセンターの常務理事 本郷俊昭氏。災害は特別であって、常時提供するサービスとはワケが違うというわけだ。
しかし、「VICSセンターがこの情報を束ねて競争領域から協調領域へと転換し、ビッグデータとして活用することで渋滞解決につながる。東京オリンピック2020でその技術を世界にアピールできる」(本郷氏)との訴えに各社の対応が軟化。
各社と交渉を重ね、ようやく協力を得られることになったという。