最大トルク1587kg-mの怪物 GMCハマーEV ピックアップへ試乗 すべてが破格 後編

公開 : 2022.08.21 08:26

軍用車両だったハマーが、21世紀を迎え1000馬力のBEVモンスターとして復活。英国編集部が北米で試乗しました。

とてつもない動力性能をたやすく発揮

バッテリーEV(BEV)として復活を遂げた、GMCハマーEV ピックアップ。インテリアのスイッチ類など、車載機能の操作系はタッチが良い。いかにも堅牢そうで、扱いにくさもなさそうだ。

ダッシュボードやセンターコンソールはレトロ感のある見た目ながら、仕上げや作り付けは高水準。大胆なボディから受ける印象と比べれば、控えめではある。

GMCハマーEV ピックアップ・エディション1(北米仕様)
GMCハマーEV ピックアップ・エディション1(北米仕様)

ダッシュボードの中央には巨大なタッチモニターが据えられ、ドライバーの正面にはメーターパネル用のモニターが備わる。インフォテインメント・システムには、月面を走るハマーEVのイラストなど、遊び心も交えてある。

車内の観察を終えたところで、いよいよアクセルペダルを踏んでみよう。予想通り、とてつもない動力性能をたやすく発揮してくれた。

試乗車のハマーEV ピックアップ・エディション1の場合、フロントアクスル側に1基、リアアクスル側は左右に2基、合計3基の駆動用モーターを搭載している。ハマーEVとしてはトップスペックに当たる、トリプルモーター仕様だ。

砂利が浮いた滑りやすそうなグラベルでも、物理の法則を無視するように鋭く加速していく。0-100km/h加速は、アスファルト上なら3.0秒でこなすという。

同時に、車重が4111kgもあることを端々から感じ取れる。過剰なパワーを持ってしても、基本的に操縦性はアンダーステア傾向。コーナーへの侵入手前の、ブレーキング時でも軽くないピックアップだということを実感する。

四輪操舵システムで斜め走行も可能

もちろん無骨な見た目のオフローダーとして、直線加速だけが長けているわけではない。ボディ底面は装甲車のように強化されており、アダプティブ・エアサスペンションを採用し、突出した悪路性能も与えられている。

パワフルでシームレスなドライブトレインは、オフロードでも極めて有効。GMCがワッツ・トゥ・フリーダム、略してWTFモードを含む、複数のドライブモードも実装されている。3基の駆動用モーターは、必要に応じて各タイヤへトルクを掛けることも可能だ。

GMCハマーEV ピックアップ・エディション1(北米仕様)
GMCハマーEV ピックアップ・エディション1(北米仕様)

加えて、四輪操舵システムも搭載する。フロントタイヤとリアタイヤの向きを同方向に変えることで、斜めに走ることも可能。自由自在といっていいだろう。

市街地ではあまり出番がないかもしれないが、悪路では巧みに障害物をかわすことができるはず。といっても、恐らく殆どの凹凸を苦もなく乗り越えてしまうとは思うのだが。

着座位置が高く、ボンネットも長く、運転席からフロントの下側は特に見えにくい。そのため、フロントタイヤの直前から路面付近の様子を映し出すカメラが付いている。目前の大きな岩も、見逃さずに済むだろう。

そもそも、狭い道が入り組んだ環境を前提にハマーは設計されていない。広大なアメリカ大陸が想定されている。現在のところ、ハマーEVは英国へ正規導入される予定はないという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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