993の絶妙レストモッド ポール・スティーブンス 993Rへ試乗 ナローボディは維持

公開 : 2022.08.20 08:25

オリジナルの雰囲気を残すドライビング体験

ドライビングポジションは若干オフセットしているものの、全体的には良好。シートはしっかり身体を包み、穴あき加工されたペダルは踏みやすい。ステアリングホイールは定番のモモ。

ステアリングコラムから伸びるレバーは、アルミニウム製へ交換されている。6速マニュアルのトランスミッションはオリジナルのままだが、シフトノブはポール・スティーブンスによる専用品だという。

ポール・スティーブンス・オートアート 993R(欧州仕様)
ポール・スティーブンス・オートアート 993R(欧州仕様)

車内はシンプルで、ポルシェ911と一体になって峠道を堪能するという目的に最適化されている。ナビが必要な場合に備えて、スマートフォンを置く場所が用意されている。

インテリアの仕上がりも良い。軽さを重視した少量生産であることを考えると、フィット感も高い。派手すぎることもないし、オリジナルの雰囲気も壊されていない。居心地が良い。

ドライビング体験も、それに準じている。ボディシェルが強化されたことで、筆者の記憶のなかの993型よりステアリングの精度は大幅に高められている。重み付けは丁度よく、不要なキックバックは一切伝わってこない。

全幅が1735mmしかない、コンパクトなポルシェを運転するという喜びを味わえる。このプロトタイプは左ハンドル車だったが、左側通行の英国の道でも運転しやすく感じた。

調整式ダンパーは、1番柔らかい状態が一般道向き。これ以上硬い必要はないだろう。正確な操縦性を引き出せつつ、管理の悪い路面からの入力を丸めてくれる。ドイツのアウトバーンやサーキットでは、硬めの設定が効果を発揮すると思う。

ネオ・クラシック911へ求める通りの充足感

柔らかい設定なら、乗り心地は良好。911らしいシャシーバランスも味わえる。コーナー途中のブレーキングで、フロント側へ荷重を移すこともできる。

出口が見えたら、徐々にアクセルペダルへ力をかける。バランスが転じて、ステアリングホイールの手応えが軽くなる。エンジンが勢いよく吹け上がっていく。8000rpm以上を目指して。

ポール・スティーブンス・オートアート 993R(欧州仕様)
ポール・スティーブンス・オートアート 993R(欧州仕様)

変速フィールは極めて軽快で、アクセルレスポンスも鋭敏。ブリッピングさせながらのシフトダウンには、少々テクニックが求められる。

だが、クルマは軽くエンジンは粘り強い。2速へ落とさず3速のままでも、爽快にクリアしていける。パワーデリバリーは線形的で、ネオ・クラシックのポルシェ911へ求める通りの充足感を享受できる。

限界領域は高く、1人の顧客のために開発されたプロトタイプということで、能力は探りきれなかった。価格を知ると、なおのこと気が引ける。スティーブンスによれば、これには50万ポンド(約8250万円)の費用が掛かっているらしい。

市販向けのオートアート 993Rは、もう少しお手頃になる予定だという。最終的な価格を知るまで評価はしにくいものの、素晴らしい仕上がりだったことは断言できる。

ポール・スティーブンス・オートアート 993R(欧州仕様)のスペック

英国価格:50万ポンド(約8250万円/試乗車)
全長:4245mm(オリジナル993型)
全幅:1730mm(オリジナル993型)
全高:1300mm(オリジナル993型)
最高速度:297km/h(予想)
0-100km/h加速:4.5秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1220kg
パワートレイン:水平対向6気筒3746cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:334ps/7400rpm
最大トルク:36.5kg-m/5675rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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