【現実の環境でテスト】日産アリアB6 2WD 一般道/高速道路/峠道で検証

公開 : 2022.08.16 06:25

バッテリー 国際基準に達するが課題も……

バッテリー容量は66kWhで従来のリーフの40kWhに比べれば、かなり強力だ。

しかも、91kWhの高出力なB9仕様も用意されているので、ようやく国際基準のレベルになったと思う。

ガレージに設置されているポルシェの8kW(200V×40A=8kW)の充電器を使用しても、アリアの場合は、6kW分しか流れないという。
ガレージに設置されているポルシェの8kW(200V×40A=8kW)の充電器を使用しても、アリアの場合は、6kW分しか流れないという。    戎大介

しかし、当家のガレージに設置されているポルシェの8kW(200V×40A=8kW)の充電器を使用しても、アリアの場合は、6kW分しか流れないという。

実際に接続してみると、31アンペア程度(本来なら30アンペア以内で200V×30A=6kW)が常時流れていたので、その通りで、もし可能なら、6kWの制限を外してもらえば、より早く、充電が可能になるはずだ。

仮に、これまでリーフを使用しているユーザーがアリアを購入するなら、この際、6kWの充電器にバージョンアップすることをお勧めする。

もちろん、新たに購入するのなら6kWは必須だと思う。まして、この冬に発売予定のB9であれば、ますます従来の3kWの充電器はありえない。

理論上、66kWhのバッテリーを3kWの充電器で満充電にするには、22時間もかかってしまう。

無論、6kWなら半分の11時間で済むし、8kWなら8時間程度で終了する。

これなら、夜、帰宅してから充電を始めても、翌朝には満充電に近くなっているはずだ。

よく、メーカーやディーラーの広報の人が、足りない場合は急速充電と併用すればよい、とおっしゃるが、この方は、自分でEVを所有したことがないのは明白で、EV生活の基本は、夜間(あるいは時間のある時に)に普通充電器で充電することの繰り返しで完結すべきであり、急速充電器は、遠出や充電器の無い時などに使用すべきものであろう。

急速充電での対応は、90kWの場合がよく語られているが、現実には、残念ながら設置は非常に少なく、殆どが50kWである。

とすると、精々150km分程度しか充電できないことになるので、30分待つことを考えると割に合わない気もする。

いずれにしても、購入者が、自分のクルマの使用状況にあったEVを選択することが大切である。

日産が今後、アリアクラス、或いは、これ以上のクラスのクルマを生産する場合、充電インフラをどう考えてゆくのか、ぜひ、知りたいところである。

高速道路 剛性感強くストレス無し

さて、実際にステアリングを握ってみる。

操舵力はかなり軽めで最初やや戸惑うが、慣れると、的確な切れ味に納得する。

気持ちよく飛ばした代償は大きく、僅か112kmしか走っていないにもかかわらず、179km分の電力を消費し、残電気は63%となった。計算すると4.58km/kWh。
気持ちよく飛ばした代償は大きく、僅か112kmしか走っていないにもかかわらず、179km分の電力を消費し、残電気は63%となった。計算すると4.58km/kWh。    戎大介

ボディの剛性感は高く、段差やうねりは、とてもうまくいなしてくれる。

特に中央高速では、普段のポルシェ・タイカンと殆ど同等の走りをしてもまったくストレスがない。

おそらく、他の国産のPHEVでは、エンジンキャパシティが小さいので、一定の回転数を超えるとかなり煩いが、EVではモーターの唸りが僅かに高まるだけで、とても安定した走りが得られる。

検討を要する点としては、シートホールドをもう少し良くしてもらいたい。

現状では包み込む感覚が薄く、また、室内のミラーは、デジタル表示でも反射が入って二重像のようになり視認性が悪かった。

スイッチ類は、ワンタッチの操作が少なくやや煩雑である。ワンペダル仕様は、不自然ではないが常用する気にはなれなかった。

甲府に到着して充電してみると、気持ちよく飛ばした代償は大きく、僅か112kmしか走っていないにもかかわらず、179km分の電力を消費し、残電気は63%となった。計算すると4.58km/kWhである。

更に満充電にした時の走行可能距離は396kmから340kmへと大幅に減少した。

メーカーの発表している走行可能距離は、最大470kmなのでこの乖離は大きい。

要するに、気持ちよく飛ばせば燃費が悪化するのは、EVであろうが内燃機関であろうが一緒で、あえて、EVだからといって、走り方を変えるのは絶対にやりたくないことである。

ごく普通にいつも通り走ってみて、どんな具合なのかをレポートすることに意味があると思っている。

因みに、後述するように、三津浜への往復では、走行可能距離は387kmまで復活した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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