EVの霊柩車 ロングボディの日産リーフ、海外で注目度アップ 電動ならではの課題も

公開 : 2022.08.15 18:05

日産リーフをベースに霊柩車へと改造した車両が英国で登場しました。シンプルで環境負荷の低い葬儀を求めるユーザーから支持を得ているとのこと。果たしてどんなクルマなのか。編集部によるプチ試乗も。

重量増加はわずか 静かな霊柩車

日産リーフの「霊柩車」仕様が英国で登場した。62kWhバッテリーのリーフをベースに、葬儀用車両やリムジンのコーチビルダーである英国のウィルコックス・リムジン社が改造したものだ。

この霊柩車は、前席にドライバーと葬儀のコンダクターを、後方に長さ2mの棺など最大230kgの積載物を載せることができる。

ウィルコックス・リムジン社が開発した日産リーフの霊柩車仕様
ウィルコックス・リムジン社が開発した日産リーフの霊柩車仕様    AUTOCAR

ウィルコックス・リムジン社は、純正のルーフとピラーを取り外し、リサイクルされたカーボン製パーツに交換。専門デザイナーがスタイリングを手掛けた。ボディは80cm延長され、バッテリーパックは重量配分を最適化するために後方に移動。リアセクションは剛性とブレースが強化されている。

このような改造を施し、全長・全高ともにサイズアップしたにもかかわらず、標準のリーフより3%しか重くなっていないという。その最も大きな理由は、リアドアとリアシートが取り除かれていることだ。従来の霊柩車は少なくとも4人が座れるシートを備えているが、今回のモデルは2人乗りとなっている。

ウィルコックス・リムジン社の創業者ウィリアム・ウィルコックスの孫にあたるルイス・ウィルコックス氏は、この霊柩車仕様のリーフが英国内の大手葬儀会社から好評を得ているとし、環境意識の高い顧客のために、より環境負荷の低い霊柩車が求められていると述べた。

「リーフの霊柩車は、愛する人のために、シンプルで環境に優しい埋葬や火葬を求める人が増えている中で、理想的なモデルです」

走りは上々 EVならではの悩みも

編集部は、同社が開発した霊柩車仕様のリーフを、荷を載せずに試乗した。リスタイリングはシンプルでありながらインテリジェントかつ繊細で、製造品質も非常に高いものだった。ハイルーフに大型テールゲートなど、日産純正のステーションワゴンと見紛うばかりのまとまりのあるデザインだ。

走行性能としては、わずかな車重増加による影響も受けず、淡々とした走りを見せる。郊外のでこぼこ道では落ち着いていて快適。速度を上げても、狙い通りのコーナリングを見せてくれる。唯一の不満は、深めの段差を乗り越えるときに顕著な衝撃を受けることだ。62kWhバッテリー搭載車の最大航続距離は340kmで、標準より若干短いという。

ウィルコックス・リムジン社が開発した日産リーフの霊柩車仕様
ウィルコックス・リムジン社が開発した日産リーフの霊柩車仕様    AUTOCAR

電動ゆえに静かなのは当然だが、これは霊柩車というクルマの特性にとって理想的である一方、仇となるケースもあることをウィルコックスは認めている。

「葬儀の行列で霊柩車の前を歩くコンダクター(葬儀ディレクター)は、振り向かずに車両の位置を把握する必要があります。しかし、リーフでは車両が動いているかどうか気付けない可能性があります。こうした事態を避けるために、リーフのバック警告音を応用して音を出すことにしました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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