EV化するBMW M3 高性能部門初の電動Mモデルへ 伝統的なフィーリング維持

公開 : 2022.08.15 19:25

BMW Mの至宝とも言えるM3。EV化が見込まれる次世代モデルでは、Mの伝統を守り続けることができるのか。M部門のトップは、「予想外」のモデルになると示唆しています。

M部門の電動化

BMWのM部門(M GmbH)は今年、設立50周年を迎える。これを記念してさまざまな新モデルが発表されているが、一連のリリースを終えた後、BMWはM3の後継となるEVの開発に着手する見込みだ。

今年はM部門にとって、多忙な1年となっているようだ。すでにM4 CSL、M3ツーリング、そして23年ぶりの耐久レーサーとなるV8ハイブリッドLMDhが公開されているが、まだこの後もXMとM2クーペのローンチが控えている。

次期BMW M3は、前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動に対応した新プラットフォームを採用する見込み。(画像は予想レンダリング)
次期BMW M3は、前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動に対応した新プラットフォームを採用する見込み。(画像は予想レンダリング)    AUTOCAR

第2世代となる次期M2クーペは、M3およびM4と同じB58 3.0L直6エンジンをデチューンして搭載し、電動アシストなしで走る「純ICE最後のMモデル」としてデビューする。一方、ほぼ同時期に登場するXMは、部門初のハイブリッドSUVとなり、Mモデル電動化の先陣を切る。

次に登場するのは、XMと同じハイブリッドV8を搭載した新型M5で、その先には完全EV化が控えている。

BMWは2030年までに世界販売台数の50%をEVにすることを目指しており、特定の市場(英国やEU)では、2035年以降、内燃エンジンを搭載した新車を販売できなくなる。つまり、ファンに長年愛されてきたMモデルも、いずれは完全EVに切り替わるということだ。

BMW Mのフランク・ヴァン・ミールCEOはAUTOCARの取材に応え、今後の見通しを示した。彼のコメントによると、BMWの至宝M3が電動化しても、長年培われてきた伝統は損なわれることなく引き継がれていくようだ。

「クレイジー」なM3が登場?

「M3のストーリーは永遠に続く」とヴァン・ミールCEOは語る。「4気筒から6気筒、8気筒から6気筒ターボと、エンジンが変わるたびに、そのストーリーは引き継がれてきたのです」

「もしEVになったとしても、M3であることに変わりはありません。パワートレインがどうであれ、クルマに乗ればMモデルであることがわかるはずです。わたし達は50年間、時の試練に耐えてきましたし、これからもそうあり続けるでしょう」

顧客の大半はパワートレインの方向性を気にしていない、というのがBMWの見解のようだ。(画像はBMW M3コンペティション)
顧客の大半はパワートレインの方向性を気にしていない、というのがBMWの見解のようだ。(画像はBMW M3コンペティション)    AUTOCAR

ヴァン・ミールCEOはさらに、「将来的にはハイブリッドや完全EVといった電動Mモデルも見てみたいと考えていますが、もしそれが実現すれば、『クレイジーだ、まったくの予想外だった』と言われるほど画期的なものになるでしょう」と述べている。

彼のコメントによると、BMWは、EVへの移行による魅力の衰えを懸念していないようだ。そして、顧客も電動化の云々を気にしていないという。

「お客様に話をお伺いしたところ、90~95%の方はパワートレインの方向性は気にしていないとのことです。お客様はMモデルに乗りたいだけなのです。たしかに、V8が無ければ駄目だという声もありますが、それはそれでいいんです、尊重しています」

現行のM3のベースとなっているG20世代の3シリーズは、2020年に発売されたもので、2025年ごろまで販売されると予想されている。M3もそのタイムラインに沿って世代交代するかどうかはまだ確定していないが、ヴァン・ミールCEOのコメントから、新型EVセダン「NK1」が2025年に登場する可能性が出てきた。

今のところコードネームしか知られていないNK1は、3シリーズの実質的な後継モデルとなる見込みで、BMWの「ノイエ・クラッセ」プラットフォームを初めて採用するモデルとなる。ノイエ・クラッセは最終的に、現在のFAARおよびCLARプラットフォームの後継となるものである。

ノイエ・クラッセ・プラットフォームは、新世代のパワートレイン、バッテリー、デジタル・オペレーティング・システムなどに対応する見込み。Mモデルにおいて重要なのは、前輪駆動と四輪駆動だけでなく、後輪駆動方式にも対応するように設計されていることだろう。

つまり、Mモデルの次期EVラインナップは、現在の内燃機関車ラインナップとほぼ同じで、後輪駆動車と四輪駆動車(xドライブ)が設定される可能性がある。EVのM3は伝統を守りながら、サーキットをテーマにした専用デザインとシャシー・コンポーネントのアップグレードが行われると予想される。

BMWはすでに、i4 M50とiX M60というM仕様のEVを投入しているが、出力こそM4やX5 Mと同等であるものの、M440iなどのMスポーツモデルの電動版として位置づけられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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