見た目は60年代風、中身は未来 EVになった初代フォード・マスタング 生産施設に潜入

公開 : 2022.08.16 06:05

独立した4基のモーターを搭載

チャージ・カーズ社の本社は英国ミドルセックスのウェスト・ドレイトンという町にある。A408号線から少し入ったところにあり、モノトーンのインテリアはクールで、工業施設らしくないスタイリッシュな雰囲気がある。

エレクトリック・マスタングは、フロントとリアに2基ずつ配置された計4基のモーターで駆動する。モーターはそれぞれドライブシャフトを介して、各車輪に1つずつ連結されているのだ。

チャージ・カーズ社のエレクトリック・マスタング。
チャージ・カーズ社のエレクトリック・マスタング。

バッテリーパックは、アライバルの商用バンと同じLG化学のチューブ状セル2170個を使用。アライバル独自の204個のセル/モジュールのカーボンファイバー・ユニットに六角形にパッケージングされている。

合計17個のモジュールが搭載されており、そのうち9個はフロアマウントに、8個がリアシート部分にある。バッテリー容量は63kWh、航続距離は約320kmとされ、充電は交流で最大22kW、直流で最大50kWまで可能だ。

バッテリーパックの総重量は、ヒートシンクプレートと水/グリコールによる冷却システムを含め、305kgと比較的手頃な重さであり、特注のカーボンファイバーケースにパッケージされている。

もちろん、フォードの同意なしに、マスタングの象徴的なデザインを商用利用することはできない。チャージ・カーズ社は「多額」のライセンス料を支払ったため、フォードの商標は使用できないが、マスタングを名乗るクルマを売ることはできる。1台1台すべて車両に、フォードとのライセンス契約を示す認証プレートが取り付けられる。

フォードの承認を得たデザイン

光沢のあるブラックペイントで仕上げられたマーケティング用ショーカーは、本家と同じくとても美しい。1967年のマスタングのボディを細部にわたってアップデートしたことは驚くべきことだが、そのために多大なエンジニアリングと部品調達のコストがかかっている。

「ボディを一から作り直したんです」とロバーツ。「一見すると1967年のクルマのように見えるかもしれませんが、パネルもガラスもすべて独自のもので、フラッシュ式ドアハンドルや独自のスイッチ類も装備しているのです。新型車なんですよ」

エレクトリック・マスタングの組み立ての様子。
エレクトリック・マスタングの組み立ての様子。

独自のボディパネルは、どれもオリジナルの1967年型には合わないだろう。パネルの多くは、オリジナルを3Dスキャンして作成したパターンを使って、カーボンファイバーで完全に作り直したもの。より滑らかで洗練された外観にデザインし直し、新しいライト類にも対応させているのだ。

コンポジット製のクロージャーやフロントウイングも、同じように独自のものに仕上がっている。ボンネットは2ピースのカーボン・プリプレグ。重量は8kgで、スチール製のオリジナルより14kgも軽くなっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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