ハンス・グラース2600 V8とBMWグラース1600 GT 希少なドイツ製クーペ 2台を比較 後編
公開 : 2022.08.28 07:06
トルク特性がピーキーな4気筒エンジン
ジャフスはパワーステアリングを追加しており、2600 V8は低速域でも取り回ししやすい。充分な感触も伝わってくるため、ハンス・グラースのフラッグシップでありラストモデルは、本来以上に運転が楽しく感じられたようだ。
一方のBMWグラース1600 GTは、元気ハツラツ。ステアリングホイールは低速域で非常に重く、クラッチは鋭く繋がる。運転時は、一層の注意力や体力が求められる。
4気筒エンジンは、低速域では扱いやすい。だがトルク特性がピーキーで、常に正しいギアを選んでいる必要がある。回転上昇は鋭敏。それでいて、フラットスポットも存在する。
軽快に運転するには、高めの回転数を保つのが1番。シフトチェンジも楽しめる。ただし、1速の近くにあるバックギアのストッパーが弱い。これは、2600 V8と共通といえるだろう。
1600 GT独特のクセを身体で覚えるまで、コーナリングはぎこちない。慣れてしまえば、運転席からの見晴らしは良く、アクセルペダルを調整しながらのライン取りは難しくない。
脱出加速ではリア・サスペンションが深く沈み、意欲的に運転して欲しいと訴えてくる。同時期の4気筒エンジンより、聴覚的にも興奮度は高いように感じる。
2600 V8には、好印象なグランドツアラーとしての懐の深さがある。動力性能は充分で、オーナーのジャフスもその個性が好きだと話す。ドライビング体験の魅力では負けていない。
多くの人の記憶から消えてしまったブランド
BMWグラース1600 GTには、コンバーチブルも存在した。その小粋で活発な印象から、ドイツ版アルファ・ロメオといったところかもしれない。スタイリングもイタリアンだ。
ハンス・グラース2600 V8からは、より開発を深める予算と時間があれば、素晴らしいモデルに仕上がった可能性を感じる。しかし、現在では殆どの人の記憶から消えてしまったブランドといえ、コレクターによる注目度も高くはないようだ。
ジャフスは、真っ白なハンス・グラースの次期オーナーを探している。資格として求められるモノは、資金力以上に、クルマを気づかう気持ちだと笑顔で話してくれた。
協力:グラハム・ジャフス氏
ハンス・グラース2600 V8とBMWグラース 1600 GT 2台のスペック
ハンス・グラース2600 V8(1965〜1968年/欧州仕様)のスペック
英国価格:3046ポンド(新車時)/8万5000ポンド(約1402万円)以下(現在)
販売台数:657台(BMWグラース 3000 V8を含む)
全長:4597mm
全幅:1753mm
全高:1397mm
最高速度:194km/h
0-97km/h加速:11.0秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:1350kg
パワートレイン:V型8気筒2580cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:152ps/5600rpm
最大トルク:20.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル
BMWグラース1600 GT(1967〜1968年/欧州仕様)のスペック
英国価格:1万5850マルク(新車時)/5万5000ポンド(約908万円)以下(現在)
販売台数:1298台
全長:4045mm
全幅:1549mm
全高:1283mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:10.8秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:830kg
パワートレイン:直列4気筒1573cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:105ps/6000rpm
最大トルク:13.3kg-m/4500rpm
ギアボックス:4速マニュアル