還暦を迎える英国の名車 BMC ADO16を振り返る モーリス1100/MG1100 前編
公開 : 2022.09.03 07:05
MG初の前輪駆動モデルとなった1100
9194 DFのナンバーを付けた個体は、当時のBMCの設計やデザインに忠実だという点も見逃せない。モールトンの画期的なアイデアを、イタリアの名門、ピニンファリーナによるボディが包んでいる。
こんな魅力的な組み合わせのコンパクトカーが、60年前の英国では695.7ポンドから購入できた。多くの市民が惹き寄せられても、不思議ではなかった。
2モデル目として、MG 1100がデビューしたのは1962年10月2日。英国価格はモーリス1100より僅かに高い713.9ポンドで、ヒーターと2基のSUキャブレター、ウッドパネルがあしらわれたダッシュボードが追加されていた。電灯付きの灰皿も小粋だった。
MG初の前輪駆動モデルでもあり、アダム・マーシャル氏がオーナーの1966年式は、オリジナルの端正な姿を今に残している。驚くほど状態が良く、ブラックに塗られたボディは凛々しい見た目を一層強めている。
「不動産の営業マンが乗るようなクルマでしょうね」。と、笑みを浮かべながらMG 1100からマーシャルが降りてくる。古い町並みを鉄筋コンクリートの高層ビルへ建て替える現場に、ADO16シリーズで乗り付ける様子が思い浮かぶ。
翌1963年には、ロンドン・モーターショーでオースチン1100が発表された。当時のAUTOCARは、狭いロンドンで充分な駐車スペースがないビジネスマンにとって、理想的なチョイスだと評価した。
この続きは中編にて。