還暦を迎える英国の名車 BMC ADO16を振り返る モーリス1100/MG1100 後編
公開 : 2022.09.03 07:07
英国の小型ファミリーカーを定義したといえる、ADO16シリーズ。6ブランドから展開された名車を、英国編集部が振り返ります。
もくじ
ーライレーの最後を飾った1300 MkII
ー簡単に100km/h近くまで加速できる1300 GT
ー消費対象として見られたADO16シリーズ
ーADO16シリーズ(1962〜1974年) 主要モデルのスペック
ライレーの最後を飾った1300 MkII
1962年の登場以来、ADO16シリーズの排気量は1098ccのままだったが、1967年6月にBMCはシングルキャブレターの1275cc版を導入。MGとライレー、ヴァンデンプラ、ウーズレーの4ブランドに1300を設定した。
さらに1967年10月、MkIIへのマイナーチェンジに合わせて、オースチンとモーリスにも1300が登場。1968年4月にはMGとライレー、ヴァンデンプラ、ウーズレーのエンジンはツイン・キャブレター化された。
1968年末になると、MGとライレーは71psへパワーアップ。クロスレシオのトランスミッションも設定されている。
この頃にはブランド間の違いが一層ややこしくなるものの、ポール・ル・ブリック氏が所有するスカイブルーのライレー1300 MkIIが魅力的なことに変わりはない。当時の英国価格は955.6ポンドで、ADO16シリーズとしては終わりから2番目のモデルになる。
戦前のライレーに通じるような、伝統的な雰囲気を残している。同時に、ミニ・クーパーより広い車内空間を求めるドライバーにも響く内容といえた。
「私のクルマは最後に作られたMkIIの1台。ライレー・ブランドの最後の1台でもあります」。と、ル・ブリックが話す。1969年7月、英国の自動車史で最も古いブランドの1つが、BMCとレイランドの合併で犠牲になった。
1969年10月には、オースチン1300 GTが登場する。しかし、ライレー・ブランドと基本的なコンセプトが異なり、よりスポーティなポジショニングだった。並行して、モーリスのエンブレムが付いた1300 GTもリリースされた。
簡単に100km/h近くまで加速できる1300 GT
1300 GTの特徴だったのが、マットブラックに塗られたフロントグリルとビニールレザー張りのルーフ、ローダウン・サスペンション、ビニールレザー張りのアルミ製ステアリングホイールなど。ラリー風のインテリアも、ドライバーを喜ばせた。
英国価格は909.13ポンドと、内容を考えればお手頃でもあった。TUJ 214Hのナンバーを付けたフレイム・レッドのオースチン1300 GTも、そんな1台。複数のコンクールで受賞するほど状態も良い。
テリー・ウォーラー氏は2012年9月に購入したという。「基本的に、もともと状態は良かったんです。運転しやすく、アクセルペダルを踏めば簡単に100km/h近くまで加速できます。とても快適ですよ」。ブラックとシルバーのホイールキャップも珍しい。
ここまで7台をご紹介したADO16シリーズだが、海外の工場で作られたクルマも欠くことはできないだろう。そこでオースチン・アパッチにもご登場願った。
南アフリカ側のレイランドの働きかけで誕生したアパッチは、ADO16の後継モデル、ADO22の前触れといえる内容だった。1.3Lエンジンはロンドンの南、ブラックヒース工場で製造されている。
アパッチは1973年にマイナーチェンジを受けMkIIへ進化し、ツインキャブレター仕様のTCも追加された。生産は1977年まで続けられ、ADO16シリーズの幕を閉じている。
ブラックのボディにホワイトのルーフを備えた1976年式オースチン・アパッチ MkIIは、イアン・クリーズ氏がオーナー。トライアンフ1300や2000 MkIIと、見た目の雰囲気が似ていることが面白い。