【詳細データテスト】ポルシェ911 ハンドリングが向上 標準サスなら乗り心地は満足 遮音は要改善

公開 : 2022.08.20 20:25  更新 : 2022.09.06 03:44

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

911ターボのキモとなるレシピは、はじめてフロントにドライブシャフトが備わった993世代からなにも変わっていない。無作法なほどパワフルな、ツインターボのフラット6をリアにマウントし、駆動力を四輪へ常時送り込む。最新モデルには、カレラの3.0Lユニットを11mmボアアップした3.7Lユニットが与えられ、ターボで580ps、ターボSで650psを発生する。

ターボチャージャーは、先代と同じく可変ジオメトリー式だが、サイズは拡大。ちなみに、カレラは固定式だ。吸排気系は専用設計で、吸気はエンジンフードからだけでなく、ボディサイドのターボダクトからも行う。

カレラ系にもターボエンジンが積まれるようになってさえ、ターボの名はトップグレードを表す記号として使われ続けている。
カレラ系にもターボエンジンが積まれるようになってさえ、ターボの名はトップグレードを表す記号として使われ続けている。    WILL WILLIAMS

そのほか、ピエゾ式燃料インジェクターはレスポンスが改善され、新型の電子制御式ウェイストゲートはより精密な過給圧制御に寄与している。トランスミッションは彼らと同じ8速DCTだが、新設計のスティールプレートと、強化されたギアが用いられる。ギア比は991世代のターボに対し、1速が低く、8速は高く設定され、ゼロスタートの速さとクルージングの穏やかさが向上している。

カレラ用のトランスファーケースは、水冷機構を追加し、構造の補強も施され、理論上は51.0kg−mまで前輪へ送れるようになった。これは、最大トルクである81.6kg−mの、ほぼ3分の2に相当する。

興味深いのはフロントアクスルだ。先代モデルに比べ、トレッドは42mm拡幅されたが、これに対してリアの増加分は10mmにとどまる。オーバーステア気味のバランスを狙ったのでなければ、こうはならないはずだ。

あわせて、電動アシストのステアリングラックは6%速められ、ホイールはフロントが20インチ、リアが21インチに。タイヤ幅は、911GT3と同じだ。ターボもターボSも後輪操舵は標準装備で、ターボSにはPDCCことアクティブスタビライザーもセットされる。

サスペンションは、はじめて2タイプが用意された。いずれも反応を早めた新型ダンパーを採用するが、今回のテスト車には未装備だったオプションのPASMスポーツは10mmローダウン。さらにリアには補助スプリングを設置して、メインスプリングが伸び切った際にも位置のズレを抑えている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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