【詳細データテスト】ポルシェ911 ハンドリングが向上 標準サスなら乗り心地は満足 遮音は要改善

公開 : 2022.08.20 20:25  更新 : 2022.09.06 03:44

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

過去最重量の911ターボはまた、グリップが効いて、走りに熱中できるという点でも、911ターボとして最高レベルに数えられる。トレッドの拡幅とダンパーの進歩により、歴代ターボにみられた磐石のスタビリティはさらに高まったが、同時にもっとシンプルな911に見られるような、後輪駆動的バランスのフィーリングも加わった。地を這うミサイルのようだった、過去のターボにはなかったものだ。

フロントの接地面積がかなり大きいのに、ステアリングは911の4WDモデルでもっとも軽く動かせて、切りはじめのレスポンスも一番キビキビしている。安心感を覚えるほど路面をはっきりと感じ取れて、それでいて路面不整を拾いすぎることはない。じつにうまいサジ加減だ。

自走で往復できるサーキットマシンとして、ターボSは究極の一台だ。猛烈なパワーだけでなく、911の下位モデルに見られるような光る運動性もあわせ持つクルマとなった。
自走で往復できるサーキットマシンとして、ターボSは究極の一台だ。猛烈なパワーだけでなく、911の下位モデルに見られるような光る運動性もあわせ持つクルマとなった。    WILL WILLIAMS

その結果、分別あるスピードで走るぶんには、ドライビングに熱中できるが、さほど腕力は要しないクルマとなっている。コーナリング中の走行ラインは、わずかなスロットル開閉で調整できて、それでいてドライバーが望むようなストレートでのパフォーマンスは犠牲にしていない。

このターボSはシンプルに、これまでよりもグリップの効いたスポーツカー、といった感覚だ。ただし、スピードを問わず、というわけではない。992ターボSで改善されたのは速さだけでなく、ドライバーをその気にさせる走りもまたそうだ。コーナーでサスペンションに負荷をかければかけるほど、ハンドリングの冴えと深みがより感じられる。

タイトなコーナーでブレーキを強く踏み込むと、ノーズはきれいに引き込まれ、そこからスロットルを早めに開けて、ややワイドにリアを流すことができる。この繊細さや精密さは、これまでのターボ系に欠けていたものだ。

2点間の移動ペースについては、これまでどおりベンチマークになりそうなものだ。空車で1640kg、満タンでドライバーが乗ると1750kg近い重量がはっきり感じられ、とくにリアの重さがやっかいに感じられることもあるが、それも束の間だ。

全般的には、このシャシーが強大なパワーとトルクを、平坦でない、もしかしたら湿ってさえいるような路面へ伝える能力は気持ち悪いくらい高く、もっとも走りにくいくらいのB級道路で速さを維持し、もしくはさらに増す性能は不気味なくらいにみごとだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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