英国人はチューニング好き トヨタGRヤリス/フォード・フォーカス ST/マツダ・ロードスター 3台乗り比べ 前編

公開 : 2022.08.27 09:45

あからさまなオーバーパワーは楽しい

エコブーストという名の4気筒ターボは、即時的なアクセルレスポンスと粘り強い扱いやすさで、ドライバーが求めたパワーを線形的に生み出してくれる。それでいて、穏やかに運転すれば燃費は14km/L前後まで伸びる。

一方で、能力を解き放たれたエンジンに対応しきれていないのが、フォーカス STのシャシー。最新のホットハッチとして素性に優れ、大パワーを受け止める余力も備わっているはずだが、365psは少々手に負えないようだ。

マウンチューン・フォード・フォーカス ST M365(英国仕様)
マウンチューン・フォード・フォーカス ST M365(英国仕様)

ノーマルより幅の広いアルミホイールに、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履いていても、フルスロットルを与えるとフロントタイヤがスリップし始める。路面がドライでも。ウェットなら、4速でも気は抜けない。

トラクションの限界までは、息を呑むほど爽快に運転できる。しかし、英国郊外の一般道ではすべてのパワーを発揮することが難しく、少しもどかしい気持ちになる。あからさまなオーバーパワーは、正直なところ楽しくもあるのだが。

シャシーにもマウンチューン社は手を加えているものの、不充分なようだ。ローダウン・スプリングが、グレートブリテン島の西部、ウェールズ地方の傷んだアスファルトとの親和性を高めているわけではない。

ホイール・オフセットが変化し、タイヤのグリップ力も増し、ワダチの起伏に影響されるようにもなっていた。これは、ノーマルのフォーカス STにはない仕草といえる。

サスペンションがキモのリッチフィールド

続いて、リッチフィールド社によるトヨタGRヤリスへ乗り換える。彼らは多面的に手を施し、日産GT-Rでは800馬力を超える場合もあるそうだが、この例ではサスペンションにキモがあるという。もちろん、パワーアップもしてある。

出発してすぐに、今回の3台では1番チューニング度合いが高いと実感する。エンジンの振る舞いからして、明らかにノーマルとは違う。

ブラックのリッチフィールド・トヨタGRヤリス、ホワイトのマウンチューン・フォード・フォーカス ST M365
ブラックのリッチフィールド・トヨタGRヤリス、ホワイトのマウンチューン・フォード・フォーカス ST M365

最新のトヨタ車としては不自然なほど、ターボラグが目立つ。アクセルペダルを急に放すと、身悶えるように回転数が落ちる。本域の回転数へ高まるほど、想像以上に激しいエグゾーストノートが放たれる。

リッチフィールド社は、マフラーをアクラポビッチ社製へ交換したと説明する。まともなサイレンサーが付いていないように、うるさい。ディーゼルエンジンのように聞こえる人もいるだろう。

フォーカス ST M365の排気音も静かではない。だが、リッチフィールドGRヤリスが通過すると、ウェールズ地方の草をはむ羊も迷惑そうに目線を送ってきていた。

過剰なサウンドだけでなく、リッチフィールド社の味付けは非常にエキサイティング。最高出力は260psから314psへ、フォーカス ST M365より穏やかだが、向上している。パワーデリバリーは線形的で、3000rpmを過ぎた辺りからモリモリ力が湧いてくる。

そのまま、7000rpm目がけて勢いは増す一方。GRヤリスは、もともと1980年代のラリー・ホモロゲーション・マシンのようだった。それが、実際のパワー面でも達成されている。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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