英国人はチューニング好き トヨタGRヤリス/フォード・フォーカス ST/マツダ・ロードスター 3台乗り比べ 後編

公開 : 2022.08.27 09:46

英国は自動車チューニングの盛んな国。英国編集部がお手頃メニューで仕立てられた3台を、乗り比べしました。

英国の一般道を理解した足まわり

リッチフィールド社によるGRヤリスで、エンジン以上に支持したいのがサスペンション。チューニングの範囲としては限定的ながら、英国の一般道で効果的な足まわりを、彼らは完全に理解しているのだろう。見事に機能している。

ダンパーはナイトロン社製へ置換され、路面への追従性と操縦性を引き上げている。隆起部分を通過しても、リッチフィールドGRヤリスはまったく動揺する素振りがない。

ブラックのリッチフィールド・トヨタGRヤリス、ホワイトのマウンチューン・フォード・フォーカス ST M365
ブラックのリッチフィールド・トヨタGRヤリス、ホワイトのマウンチューン・フォード・フォーカス ST M365

一般的に高性能なダンパーへの交換は、ネガティブ要素のないアップグレードだといえる。落ち着きが増した乗り心地は、普段の快適性も高めている。

確かに、若干柔らかさが増したことで、シャープなステアリング・レスポンスに僅かな影響が出ているようではあった。それでも得られるメリットを考えれば、飲み込むことのできる代償といっていい。

試乗車はデモ車両で、ワイドなホイールに幅225のミシュラン・パイロットスポーツ5を履いていた。グリップ力が増すことで、314psのパワーと再調整された四輪駆動システムがもたらすであろう、操縦性の自由度がだいぶ制限されているようだった。

タイヤは、もう少し控えめなチョイスでも良いだろう。マウンチューン・フォード・フォーカス ST M365より、筆者の好みはあるが。

FRのドライビング体験を磨いたBBR社

BBR GTi ロードスターも、ノーマルよりシリアスなタイヤを履いている。フロントエンジン・リアドライブ(FR)の軽快な身のこなしが、やや鈍くなったように感じられた。とはいえ、こちらも全体的には素晴らしいチューニングにまとまっている。

エンジンは、もしかすると期待はずれかもしれない。BBR GTi社が用意するメニューで、ステージ1用のスーパーチャージャーが組まれているものの、鋭い悲鳴のような響きは聞こえてこない。

BBR GTi マツダMX-5(ロードスター)2.0 ステージ1スーパーチャージャー(NC型/英国仕様)
BBR GTi マツダMX-5(ロードスター)2.0 ステージ1スーパーチャージャー(NC型/英国仕様)

コンパクトな遠心式スーパーチャージャーが採用されており、全開のヘアドライヤーのような唸りを放つ。マウンチューンやリッチフィールドよりパワーアップも控えめで、乗り比べると自然吸気エンジンのように感じられた。

それでも、最高出力は251psへ高められている。車重は1132kgだから、動力性能に不足は微塵もない。先の2台より少し気持ちを高ぶらせ、7000rpm以上まで軽く許容する回転域を活用すれば痛快そのものだ。

エンジンを回すことで、マツダの気持ち良い6速MTを駆使する機会も生まれる。フォードもトヨタも変速フィールは悪くないが、より滑らかで軽快なロードスターの感触は、旧世代のNC型でも輝いている。

さらに、軽いFRのピュアなドライビング体験はロードスター独自のもの。BBR GTi社は、それに磨きをかけたといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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