マツダ・デミオ・プロトタイプ

公開 : 2014.07.29 23:10  更新 : 2017.05.29 19:13

知ってのとおり、新型デミオは、約2年半前に発売されたCX-5からはじまったスカイアクティブ世代マツダ……の第4弾である。設計思想は既存のスカイアクティブ車と共通だが、コンポーネントの多くの部分で共用化が可能だったCX-5、アテンザ、アクセラの3台と比較すると、完全にひとまわり小さいデミオでは、おのずと新規専用開発部分は多い。リヤサスペンションは兄貴分たちとは別物のトーションビーム。日本で用意される2種類エンジンはともに前出3車には搭載されないもので、1.3ℓガソリンと1.5ℓディーゼルターボという布陣。ディーゼルのほうがガソリンより明らかに高性能で、スポーツモデル的な扱いとなるのは兄貴分と同じだ。

注目の1.5ℓディーゼルターボは燃焼コンセプトこそ2.2ℓと同じであるものの、ボアセンターピッチが狭く冷えやすい小型エンジンで同様の効能を実現するために、ハードウエア構成はけっこう異なる。超低圧縮比が特徴のスカイアクティブだが、1.5ℓのそれは2.2ℓちょい高めで、半球型から“段付き”に変わった燃焼室形状も新しい。また、小排気量を補完するパンチ力のアップと、エンジン小型化の両立のために、2.2ℓの“排気バルブ可変リフト+2ステージターボ”に替えて、“リフト量固定+可変ジオメトリー・シングルターボ”の組み合わせにしたり、インタークーラーを吸気マニフォールド内蔵型の水冷式にしたり……と、メカオタクが思わず自慢顔で語りたくなるウンチクは、相変わらず随所に仕込まれている。

もうひとつの1.3ℓガソリンは完全新規開発ではなく、先代1.3ℓスカイアクティブの大改良版だが、2ペダル変速機が従来のアイシン製CVTから自社製の6段A/Tになったのが新しい。商品名こそお馴染みの“スカイアクティブ・ドライブ”でも、モノは今回初出の小容量コンパクトタイプ。スカイアクティブのA/Tはこれで都合3種類が揃ったことになる。エンスーなマツダらしく、M/Tも両エンジンにきちんと用意されるが、ガソリン用5段とディーゼル用6段ともに、これまた初出のコンパクトタイプである。

「クラスを超えた質感」を謳うインテリアも、べつに分不相応なソフトパッドや素材をおごったという意味ではない。メーターやナビ、シフトレバー、情報の統合コントロール(=マツダコネクト)の操作ダイヤルパネル、そして実質的な踏面積をCX-5らと同等にしたというブレーキ/クラッチペダルなど、インターフェイスが兄貴分のアクセラと共用/同等であることが、新型デミオにおけるクラスレス感表現という。あと、シート骨格も上級モデルと共通。

もっとも、個人的にインテリアで「Bセグメントらしからぬ」と最も感心させられたのは、従来より20mmほど外側に移動したというペダル配置。その能書きどおり、シートに座って自然に脚を伸ばせば、足裏のちょうどいい部分がペダルにぴたりと置かれる。しかも、スロットルペダルは兄貴分同様に、高級車の代名詞たるオルガン式を継承。まあ、欲をいえばステアリングのリーチ調整があと1〜2cm手前まで引ければ……と思わなくもないが、少なくとも日本仕様右ハンドルのドラポジは、Bセグメントとしては間違いなく世界トップ級にデキがいい。

右ハンドルのBセグメントで、ここまでのペダル配置の実現した最大のキモは、フロントタイヤが80mmほど前出しされたことだというが、そこには功罪相半ば……の部分もある。というわけで、新型デミオのホイールベースは文字どおり、先代比で80mm伸びている。しかし、前記の理由ゆえに、それは室内空間にほぼ無関係で、新型デミオはクラス最長級のホイールベースをもつにもかかわらず、後席空間レッグルームはクラス平均にとどまるのだ。その一方で、前出しフロントタイヤは「FFらしからぬロングノーズ感」というマツダ・デザイン共通のオーラを、コンパクトなデミオで醸し出すことには寄与している。

今回はプロトタイプで、しかも特殊なクローズドコースでの試乗だったために、走りについては断片的なことしか書けない。乗り心地にはまだ熟成の余地があったが、強力でリニアなステアリングで、小さなデミオがさらにコンパクトに感じられた。荷重移動にジワリと正確に反応して着実な接地感があり、かつリヤが粘りすぎないエンスーな前後バランスも、いかにも最新マツダらしい好ましいところである。

ガソリンとディーゼルでは100kgほどの重量差があるが、その前輪荷重の違いによる操縦性や乗り心地は、これまでのスカイアクティブ車より少ないのが印象的だった。CX-5やアテンザでは「ガソリンは軽快だが接地感でディーゼルにゆずり、ディーゼルは重厚感と接地感は良好だが、明らかに曲がりにくい」といった印象があったし、アクセラはディーゼルだけが飛び抜けてよく走る感があったが、新型デミオでは、重量差を確かに感じるシーンがありつつも、ガソリンは意外なほど重厚で、ディーゼルは逆に予想外に軽快だった。ディーゼルより明確に安いはずの価格も考慮すれば、ガソリンモデルの相対的な商品力は、これまでのどのスカイアクティブより高いと思う。

(佐野弘宗)

マツダ・デミオSKYACTIV-D 1.5 2WD

ボディ・サイズ 4060×1695×1500mm
ホイールベース 2570mm
トレッド (前/後) 1495/1480mm
車両重量 1130kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
排気量 1498cc
燃料供給 コモンレール
最高出力 105ps/4000rpm
最大トルク 25.5kg-m/1500-2500rpm
ギアボックス 6速オートマティック
タイヤ (前/後) 185/65R15 / 185/60R16

マツダ・デミオSKYACTIV-G 1.3 2WD

ボディ・サイズ 4060×1695×1500mm
ホイールベース 2570mm
トレッド (前/後) 1495/1480mm
車両重量 1030kg
エンジン 直列4気筒DOHC
排気量 1298cc
燃料供給 筒内直接噴射
最高出力 92ps/6000rpm
最大トルク 12.3kg-m/4000rpm
ギアボックス 6速オートマティック
タイヤ (前/後) 185/65R15 / 185/65R15

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