パガーニ・ウアイラ BCロードスターへ試乗 802psのAMG V12 実は従順なスーパーカー 前編

公開 : 2022.08.23 08:25

タブシャシーはカーボンとチタン

新しい世代へ入れ替わる前にウアイラへ試乗することには、意味があると考えた。ミドシップされるメルセデスAMG由来のV型12気筒エンジンが、第3世代のC10にも搭載されるからだ。

今回筆者がお借りしたのは、パガーニが保有するデモ車両。もとは開発用のプロトタイプとして作られ、その後は世界的なショーカーとして各地を回った。通算の走行距離は、30万kmを超えるとか。

パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)
パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)

クラムシェルのカウルを固定するレザー製のストラップは、日に焼けて劣化している。それでも、ボディパネルは真新しい。ホイールアーチの後ろ側には、アスファルトから蹴り上げた汚れが付着している。走り込んだ雰囲気が悪くない。

BCロードスターの最初の2文字は、パガーニ・ゾンダを最初にオーダーした、ベニー・カイオラ氏の名前に由来する。とても特別な顧客なのだろう。パガーニ基準で見ても、驚くほど手の込んだ内容だからだ。

最高出力だけでなく、空力特性や入念な軽量化に至るまで、ベースとなったウアイラへ大幅な改良が加えられている。定常円旋回では、最大1.9Gまで耐えられるが、これは公道用モデルとしてトップクラス。

カーボンとチタンを用いたタブシャシーは、BCクーペより12%もねじり剛性が高い。その製造コストは、クーペ用より5倍も高いという。

安心できるロングツーリングへの親和性

それを反映して価格も桁違い。今回お借りするのに、450万ポンド(約7億4250万円)の損害保険を契約した。高価な素材を用いながら少量生産のクルマを開発し、公道走行できるようにするには、莫大なコストが必要になる。

AUTOCARの規模としては、なかなか簡単に組める保険ではない。2019年にお借りしたマクラーレンXP5 F1 プロトタイプ以来だ。

パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)
パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)

驚くほど軽いドアを開き、驚くほど精巧なカーボン製のサイドシルをまたぐ。インテリアにも目をみはる。あらゆるパーツがチタンかアルミニウム、カーボン、レザーで作られている。シフトノブだけはウッドだ。

座り心地は良い。オラチオ・パガーニ氏自身が、安心できる操縦特性を備えた、ロングツーリングへの親和性を重視している。信じられないパワーと価格を忘れることができれば、ウアイラに圧倒されることはない。無理だけれど。

パガーニが目指した親しみやすさという考えは、ジキルとハイド的な2面性をもたらす。BCロードスターの場合は特に。

最高出力802ps、車重1250kgのウアイラは、基本的にはサーキットと仲がいい。特注タイヤのピレリPゼロ・トロフェオを履けば、GT3レーシングカーと同タイムでスパ・フランコルシャンを周回できる。

フロアマットはなく、カーボン製のパネルが露出している。豪華に仕立てられた専用バッグの横には、4点ハーネスも用意されている。触れだすときりがないが、いかにも軽く生々しく、情感豊かで、調和できていない不思議な雰囲気がある。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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