パガーニ・ウアイラ BCロードスターへ試乗 802psのAMG V12 実は従順なスーパーカー 後編

公開 : 2022.08.23 08:26

V12エンジンを積んだ第3世代モデルの開発を進めるパガーニ。第2世代のウアイラで、特別な体験を再確認しました。

グループCカーで田園地帯を駆け抜ける気分

パガーニ・ウアイラ BCロードスターのV型12気筒エンジンを目覚めさせる。不機嫌そうにひと吠えし、ゴロゴロとノイズを立てる。BCロードスターの場合、リアディフューザー部分に排気口が追加してあり、そこへまず排気ガスが導かれる。

基本的にはストレートパイプ状態。アイドリング時は控えめだが、ドライブへレバーを倒すと一気にボリュームが増す。カーボンセラミック・ディスクを固定するブレーキペダルを緩めると、周囲を支配するほどの存在感だと確信する。

パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)
パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)

速度を高めると、道幅いっぱいのワイドなマシンは、ドライバーを中心に小さく感じられてくる。だがしばらくは、視線の位置にあるフロントフェンダーのルーバーや、頭より上にあるサイドミラーへ意識が奪われる。

1990年代のグループCカーで、英国の田園地帯を駆け抜けているような気分になる。タダゴトではない。

視覚的にインテリアは豪華絢爛だが、機械的な扱いにくさはない。クルマの少ない郊外の道を運転するのが楽しい。少し速めのペース程度では、理解しやすく明瞭。スタイル優先のスポーツカーとは別次元の、清々しさがある。

金属から削り出され、機構が丸出しになったシフト・リンケージは芸術品のよう。それでいて、メーターパネルは前衛的でハイテク感が漂う。パガーニだけのミックスだ。

タッチモニターやスイッチ類は、先代のパガーニ・ゾンダからのキャリーオーバー。少々古びても見える。

操舵性や乗り心地は秀逸 主役はV12エンジン

一旦クルマを停めて、レザー・ストラップを緩め、大きなクラムシェル・リッドを開く。手動で4段階に調整できるダンパーが組まれた、ダブルウイッシュボーン・サスペンションを確かめる。

今日の設定はレース向きのようだが、彼らの技術ならではといえる緻密な姿勢制御を実現しており、ソフトさも残っている。ミドシップ・スーパーカーの多くは、低めのスプリングレートで実現させている。

パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)
パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)

鮮明で生々しい感触が、ステアリングホイールへ伝わる。1250kgのウアイラは、コミュニケーションが取りやすく流暢に操縦できる。舌を巻くほど。

電動油圧式パワーステアリングが組まれ、軽く鋭く反応する。手のひらへ僅かにフィードバックが伝わる一方で、ワダチに進路が左右されることはない。繊細だが過敏ではない。日常的な条件でも、運転しやすいかもしれない。

ステアリングフィールだけでなく、乗り心地も秀逸。1日中、ウアイラに乗っていたいと思わせる。1600kmのグランドツアーも、さほど苦ではないだろう。これでGT3マシンと同等の速さでサーキットを走れるのだから、理解に苦しむ。

やはりBCロードスターの主役は、0.3mmという極薄のアルミニウム製カバーを備えたV型12気筒エンジン。今回の試乗は、このユニットが第3世代のC10へも採用されるという事実がきっかけだった。

メルセデスAMG製の6.0Lツインターボは、たった2000rpmから106.8kg-mという怒涛の最大トルクを発揮する。ウアイラの軽いシャシーには、いささか過剰といっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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