パガーニ・ウアイラ BCロードスターへ試乗 802psのAMG V12 実は従順なスーパーカー 後編
公開 : 2022.08.23 08:26
極めてドラマチックなサウンド
乗り慣れていくほど、アクセルペダルを自由に扱えるようになる。金属製のペダルがカチカチと音を立てる。何という中毒性のある快感なのだろう。
試乗日は快晴で、路面はほぼドライ。BCロードスターは、セミスリックのようなタイヤを履いている。すべての音響を解き放つ、絶好の条件が揃っている。
インテークが、シューッと鳴らしながら空気を吸う。ターボからは甲高い回転音が放たれる。タイヤが瞬間的に身悶えるほど、圧倒的なパワーが生成される。
レース・モードを選択すると、アクセルレスポンスは一層シャープになり、エグゾーストのフラップが開く。トラクション・コントロールの介入が抑えられ、右足の力加減でウアイラを操れることが見えてくる。
先代のゾンダが鑑賞させてくれた、F1マシンのように鳥肌の立つサウンドまでは奏でない。それでも、6500rpmくらいまでの響きは極めてドラマチックだ。
AMGらしい、ヘビメタのような唸りとグズりが中回転域で増強される。パガーニの場合はより滑らかで、強制的に吸気されるインダクションの悲鳴もオーバーラップする。1度体験すれば、2度と忘れられない音響といっていい。
気を失う勢いのトップエンドの刺激は欠けている。フェラーリが296 GTBのV6ツインターボ・エンジンで果たした成果を考えると、AMGとパガーニも更なる興奮を引き出せるのではないかと思う。第3世代のC10で。
公道でも見事に鮮明で従順な性格
Xトラック社製の7速シーケンシャル・マニュアルは、高精度でスムーズにギアを変える。だが、荒削り感もなくはない。重さはかさむものの、デュアルクラッチATを採用する時が来たように感じた。
第3世代のパガーニは、ロードスターなら若干残っているものの、クーペはすでに完売だという。恐らく、実際に市街地で目にする機会はほぼないだろう。インターネット上なら、走る様子を楽しめるはずだが。
少なくとも、かつてないスタイリングをまとい、目が奪われるディティールで仕立てられる。落ち着きがあり機敏に身をこなし、ミドシップとは思えない穏やかなマナーを備えるに違いない。
802psという最高出力を秘めていながら、ウアイラ BCロードスターは荒れた英国の公道で、見事に鮮明で従順な性格を披露してくれた。多少湿っていても、それは変わらないと思う。
チタンとカーボンが多用された、V型12気筒エンジンのハイパワー・スーパーカーというだけではない。繊細で親しみを持てる、望外に優れたドライバーズカーでもある。
新しいパガーニは、このウアイラ以上に洗練されていて、より度肝を抜かされるクルマになるはず。それを実際に体験できるのは、幸運で裕福な極少数のオーナーに限られるのだけれど。
パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)のスペック
英国価格:450万ポンド(約7億4250万円)
全長:4605mm(標準ウアイラ)
全幅:2036mm(標準ウアイラ)
全高:1169mm(標準ウアイラ)
最高速度:370km/h
0-100km/h加速:2.9秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1250kg
パワートレイン:V型12気筒5980ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:802ps/5900rpm
最大トルク:106.8kg-m/2000-5600rpm
ギアボックス:7速シーケンシャル・マニュアル